小規模事業者持続化補助金の採択率と留意点

小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が販路開拓の取組をする際に、その経費の一部を国が負担してくれ、それによって地域の雇用や産業を支える小規模事業者の生産性向上と
持続的発展を図ることを目的した補助金です。

今回は、この小規模事業者持続化補助金の採択率と補助金申請にあたっての留意点を解説していきます。

制度の内容と創業枠

この補助金の補助額は通常枠で50万円です。
特別枠の申請要件を満たせば上限200万円、さらに令和5年度はインボイス特例の上限上乗せがあるので、最大250万円となっています。

特別枠には、賃上げ枠、卒業枠等がありますが、創業者向けに「創業枠」が設けられており、最大200万円の補助上限と優遇されているため、申請をぜひ検討してみてください!

例えば、「ホームページを作ろうと思っている」「販促用のチラシを作ろう!」「新商品の試作品や包装パッケージの試作開発をしたい」などの計画がある創業者の方が対象になる可能性があります。

貰ったお金はもちろん返済不要ですが、所得税・法人税等の課税対象にはなりますので、ご留意ください。

採択率

直近の第11回の採択率は約59%でした。そのほか、過去の採択率の推移は以下の通りです。
(中小企業庁の公式サイトのデータを集計して筆者が計算)

申請者の数などにも左右されるため、その回によってバラつきがあるものの、約40%~70%で推移しています。

そうなんです。採択率は、非常に「微妙」なんです。

つまり、しっかりと準備して申請をすれば採択される可能性はあるが、準備が甘いと足元をすくわれて採択されなかったということもある制度なのです。

申請するまでの留意点

小規模事業者持続化補助金の申請にあたってすることは以下の5つです。

① 電子申請(Jグランツ)を利用するために、GビズIDの取得

郵送でも可能ですが、電子申請の圧倒的に楽ですので、電子申請の準備をしてください。

GビズIDの取得は2週間程度かかる場合もあるため、早めに申請することをお勧めします。無料でできます。

② 公募要領等の確認

必ず、公募要領等を読み込んでください。

あとから、要件を満たしていないことに気づいて、それまでの準備が水の泡なんてこともあります。

また、補助金申請は期限を過ぎた場合、どんな良い計画や事業であっても絶対に認められません。したがって、タイムスケジュールを確認して、計画的に準備していくためにも公募要領には目を通すのはマストです。

③ 補助対象経費と資金繰りの検討

そもそも、補助金の対象となる経費が発生することが、補助金の前提です。なので、ご自身の事業として、販促活動等に係る経費がどのように、どのくらい発生するのかを計画してみてください。経費として発生する必要がないものに対して、補助金を申請することはできません。

また、補助対象経費を支出するには資金が必要です。

「だから補助金を申請するんじゃないか!」と思われるかもしれませんが、補助金は支出した後に実績報告をし、認められたものが、補助金として後から入金されます。

つまり、キャッシュアウトが先行するため、その資金を用意する必要があります。

自己資金や融資で用意した資金をどのように使っていくのか、資金計画を立てる必要があります。

④ 申請書類や計画の作成

小規模事業者持続化補助金の申請書類には「経営計画書兼補助事業計画書①(様式2)」というものがあり、この書類作成が最も時間がかかるものになっています。

内容は、主にはご自身の事業内容や経営環境・強み/弱み等の定性的な内容から、事業計画等の定量的なものまで、記載することになります。

また、補助金の対象となる補助事業の内容やその効果等も記載してアピールする必要があります。

記載できる枚数が指定されており、端的に要領よくまとめていくのが難しいところです。

さらに、様式2以外にも必要な書類や資料が多岐にわたり、漏れなく準備する必要があります。

⑤ 商工会議所等での事前確認をしてもらう

小規模事業者持続化補助金は、商工会議所等の支援を受けながら取り組む事業という要件があるため、様式2・3を作成したら、それを商工会議所等に持参し、確認してもらう必要があります。

確認が終わると様式4「事業支援計画書」を入手することになり、その資料が申請資料の一部となっています。

留意していただきたいのが、この商工会議所等への事前確認の期限が、補助金申請期限より前になっていることです。補助金申請期限に間に合えばよいというものではなく、この商工会議所等にいつまで行かないといけないのかを十分に確認しておくことに気をつけてください。

上記を行った後に、期限内までに電子申請を行って、後は認可されるのを願って待つだけです!

ぜひ、小規模事業者持続化補助金の制度を利用して、創業に役立ててみてください!

融資稟議書の内容を知って融資交渉に備えよう

事業者が融資を希望すると、金融機関の担当者は「融資稟議書」を作成します。

その融資稟議書が支店内の関係者及び支店長、本部の審査を行う部署に回覧された後、認可されるかどうか決まります。

申請した融資審査の結果に直接関係するのは、稟議書の内容です。そして、融資稟議書を書くのは、言うまでもなく担当者です。しかしこの担当者のレベルの差が著しく、デキる人はデキるのですが、そうでない場合も多々あり…というのが悩ましいところ。運悪くハズレ担当者にあたってしまうことも、しばしばあります。

とはいえ現在の金融機関で通りやすい稟議書を書ける担当者は、ほんのひと握りです。また、優秀な担当者の方が、取引先を抱えて忙しく、事業者へのヒアリングの経験も、またそのための時間も十分に取れなかったりします。

そこで担当者の力量(だけ)に頼るのではない対策が必要です。今回は融資稟議書に書かれる内容を把握して、事前に対策をしようというテーマを解説していきます。

融資稟議書に書かれる8項目

担当者が融資稟議書に書く項目は8つあります。
(1)金額
(2)金利
(3)実行予定日
(4)貸出期間・据え置き期間
(5)保全(保証人・担保等)
(6)資金使途
(7)返済資源
(8)融資効果

このうち、融資の決定に大きな影響を与えるのが、

(6)資金使途(なぜ、その資金が必要なのか)
(7)返済資源(どのように返済するのか)
です。

この2点が、稟議書を読む側が納得できる内容であることが大前提です。

それ以外としては、担保や保証人について説明することでリスクの高い案件にも対応できる(4)保全も重要。

さらに(8)融資効果は、この融資の社会的意義を説明することで審査側を説得しやすくなります。

融資審査に影響を与える項目

上記以外にも稟議書で重要視される項目として、以下が挙げられます。

●財務内容
●資金の流れ
●必要資金の適正性
●経営者個人の定性情報
●ビジネスモデルの将来性

これらを「資料」として提出すれば、担当者の情報収集や情報分析が十分でなくても、比較的通りやすい稟議書を作成してもらうことができます。

良い稟議書を記載してもらえるために意識すべき2つのこと

上記の融資稟議書の重要項目や稟議書以外に重視される項目を適切に記載してもらうにはどうすればよいでしょうか?

そのためのポイントとして押させておきたいことは、以下の2つです。

(1)懇意にしている金融機関との取引があること(複数あればなお良)
(2)金融機関に自社の情報を積極的に提供すること

懇意にしていない金融機関がなければ、融資申請しても担当者が熱意を持って対応してもらえません。熱意と書きましたが、実際には気合いや根性というより、稟議書全体に説得力があるか項目一つひとつに至るまで詳細に確認すること。

時間も手間もかかりますから、担当者には「この融資を通したい」熱意も必要でしょう。それが「取引金融機関とは良好な関係を」と私が伝え続けている理由です。

また、ヒアリングの経験や時間が十分でない担当者が多い現状では、事業者の側で補完する必要があります。それは金融機関へ積極的に情報提供を行うことで補えるでしょう。

普段から月に一度、資料を作って金融機関を訪問し、情報提供をするだけで、「借りたいときに」「借りたい金額を」借りられるようになります。

コロナ借換保証制度:他行での同額借り換えも検討の余地あり

国の調査結果によると、民間ゼロゼロ融資の返済開始のピークは2023年7月から2024年4月と言われています。

「今の状況ではコロナ融資を返済できない」という法人が今後増えてくると予想されています。

しかし、「コロナ借換保証制度を使った同額借換」を利用すれば、据置期間(返済猶予期間)をさらに延ばすことができます。

2023年1月より「コロナ借換保証制度」が始まりました!

しかし、「コロナ借換保証制度」に積極的でない金融機関がメインバンクのケースもあります。

今回は、この「コロナ借換保証制度」を使った「他行借換」(肩代わり融資)について解説します。

1. 「コロナ借換保証制度」とは?

「コロナ借換保証制度」とは、一定の要件を満たした中小企業者が、金融機関との対話を通じて「経営行動計画書」を作成したうえで、金融機関による継続的な伴走支援を受けることを条件に、信用保証協会の保証つきのコロナ融資を借り換えることができる制度のことです。

2.「コロナ借換保証制度」を利用した借り換えに消極的な金融機関

先述したとおり、「コロナ借換保証制度」を利用することで、据置期間(返済猶予期間)を延長することができるのですが、この制度を利用した借り換えに消極的な金融機関も見受けられます。

なぜならば、自分のところですでに借りてもらっているコロナ融資をコロナ借換保証制度で借り換えてもらっても金融機関にとって、融資額が増えるわけではないからです。

もちろん、受け取る金利が増えるわけでもありません。それどころかコロナ借換保証制度で借り換えることで、「経営行動計画書」作成サポート、また、年に1度保証協会に「事業計画進捗状況報告書」を提出するという、借り換えしなければ必要のなかった業務が発生します。

忙しい金融機関にとって、コロナ借換保証制度での借換は、メリットがないのです。

3.「コロナ借換保証制度」を利用した「他行借り換え」には対応してくれる

ところが、「他行借り換え」(肩代わり)なら、事情は変わります。なぜなら、肩代わりする金融機関にとっては、融資額が増えます。また、それに伴って受取利息=収益も増えます。

さらにコロナ借換保証制度の場合、申請する事業者の要件さえそろっていれば、信用保証協会の認可を得やすいのです。稟議書を作成する手間を、ある程度省けます。さらに、100%保証での借り換えとなると、金融機関のリスクもありません。

コロナ借換保証制度を使った「他行借り換え」は金融機関にとって、取引先の財務状況にもよりますが、低リスクで新規先を得られる絶好の機会になります。

4.肩代わりされる金融機関の事前確認は不要

「他行に依頼すると、前の銀行に申し訳ない、言い出しにくい」と躊躇する経営者もいるでしょう。

しかし、心配はいりません。保証協会の保証つき融資を別の金融機関で肩代わりしてもらうことになった場合は、保証協会の認可をとるだけでよく、基本的には肩代わりされる金融機関の「事前確認」は要りません。

いま、信用保証協会の保証つきで、コロナ融資を借りている金融機関が、コロナ借換保証制度を使った同額借換に消極的なら、積極的な金融機関に肩代わりを打診されることをおすすめします。

創業時に、自己資金のみで開業すべきか?借入をすべきか?

創業希望の方や創業して間もない方からよく、

「創業融資を借りても、返済が不安だから自己資金だけで開業しようかと迷ってます」

というご相談を受けることがあります。

こんな時、「自己資金だけで」と希望する創業者の方に対して、けして無理強いするものではありませんが、もし、迷っているようでしたら、借りることをおすすめしています。

今回は、なぜ創業融資を借りた方がよいのかということについて、以下説明させていただきます。

結論: 借りたいときに貸してもらえないから

創業から1年もすると

「今はまだ赤字だけれどあと少し事業を継続できれば軌道に乗る」
とおっしゃる事業者は少なくありません。

しかし、その時になって急に融資を申し込んでも業績が悪化したままの企業に
融資してくれる金融機関はほとんどないのです。

創業のために準備していた資金(自己資金)や調達した資金(創業融資等)が1年以内に枯渇し、事業が継続できなくなった結果、廃業せざるを得ないということになります。

だから、創業融資は借りておいた方がよい。という結論になります。

具体的に説明していきます。

創業者の生存率

「創業者の3割は1年以内に廃業し、5割は3年以内に廃業する。10年後まで生き残っている創業者は1割程度」…という話を何度か聞いたことがあるでしょう。

私も、この話を聞くことはあっても、正直、この数値の根拠となるデータを見つけることができておりません。

実際のところは、ここまで廃業する可能性が高いとは思いませんが、遠くもないかと思います。日本政策公庫の「2022年度新規開業実態調査」(12ページ)によると、創業者の開業後の状況として、3.5割程度は赤字基調です。赤字基調だからといって、すぐには廃業しませんが、赤字基調であれば、そのままであれば資金不足に陥りますので、1年以内の廃業率3割というのは、あながち遠い数字ではないのです。

このような1年以内に廃業した創業者の多くは、「あと1年(半年という方もいます)粘ることができれば、事業を軌道に乗せられたのに」とこぼします。

大半の方が、計画通りではないながらも、売上は増加していっていたのです。ただ、その売上増加スピードが計画よりも遅かったため、資金繰りが苦しくなるわけです。

手応えは感じていたのに、資金繰りの問題を解消できなかったが故に廃業せざるを得なかったのは、非常に悔しいものです。

「あと1年粘ることができれば」と肩を落とす創業者が、資金繰りが悪化したとき追加の運転資金を借りることができれば、多くは生き残れるでしょう。

つまり「創業者の3割」といわれる1年以内の廃業は、準備次第で防げるのです。

日本政策金融公庫は創業1年後の追加融資を(そう簡単に)行わない

創業者の95%は、日本政策金融公庫の創業融資で創業資金を調達します。

すべてのケースそうではないですが、基本的に公庫は創業融資を行った事業者が1年後に「準備していた資金が枯渇したので、追加で運転資金をとお願いします」と言っても、ほぼ貸してくれません。

なぜならば、基本的に公庫には、「創業融資の借入額の半分程度を返済してもらわなければ、次の融資は取り扱わない」という暗黙のルールがあるからです。

もちろん、業績が順調で前向きの追加資金を希望する事業者には、半分返済が終わっていなくても追加融資に応じてくれます。

しかし、創業計画のとおりには進んでおらず、業績が悪化している事業者には、原則的に追加融資を行いません。

基本的に創業融資の場合、「設備資金」は7年返済、「運転資金」は5年返済が多いです。

据置期間なしで借りてすぐ返済を始めても、半分を返済できるのは、「設備資金」は3年半、「運転資金」は2年半です。

1年以内に追加資金を借りようとしても、公庫は「半分返済していただいてから検討させてください」と、ほとんどの場合、断ってきます。

すると、創業1年後に赤字基調で、かつ創業資金を使い果たしそうになるものの、公庫から追加融資してもらえないという状況になります。これを「創業1年後の資金繰りの沼」と呼んでいます。

公庫と同時に民間金融機関からも借りる

では、「創業1年後の資金繰りの沼」にハマらないためには、どうすればよいか?

それは、資金繰りが最大ピンチになる1~2年後を見越して「民間金融機関からも創業融資を借り、関係性を深め、支援してもらえる態勢の構築」をすることです。

公庫の創業融資を借りるとき、同時に民間金融機関からも創業融資をしてもらうためは、下記のような方法があります。

  • 公庫に提携融資先を紹介してもらう
  • 公庫が創業融資を認可するのを条件に、民間金融機関に創業融資を申請
  • 公庫から創業融資を借りられたことを材料に、民間金融機関に融資を申し込む
  • 公庫と民間金融機関の創業融資を並行して、同時に申し込む

創業融資のデメリットは何か?

逆に創業融資を行うことでのデメリットはなんでしょうか。以下のことが考えられます。

利息負担が必要

創業融資を借りなければ、発生しなかった利息という追加的なコストが発生してしまうというデメリットがあります。

しかし、上記の創業融資のメリットを享受するための、必要経費として考えていただきたいです。

創業融資を例えば、500万円借りた場合、日本政策金融公庫の創業融資は、だいたい利率1%~3%に収まりますので(ブログ執筆時点)、最大で15万円/年間となります。

これは税務上、事業経費にもなりますし、これを高いと捉えるか安いと捉えるかは、その方の判断によると思いますが、私は事業を行う上で、必要な経費として捉えた方がよいと考えています。

なお、日本政策金融公庫の金利は利用する融資制度や担保の有無、資金使途、返済期間などによっても変わる可能性がありますので、実際の金利がどのくらいになるのかは、日本政策金融公庫の支店窓口に問い合わせてみてください。

元金返済が必要

当然ですが、あくまでも融資なので、利息をつけて満額返す必要があります。

融資は借りた後、「どう使うのか」と「どう返すのか」が重要になってきます。損益の計画や資金繰りの計画を立てながら、返済することが必要になってきます。

事業計画書作成など手間がかかる

創業融資を借りる場合には、創業計画書や事業計画書の作成が必要です。
借入額が少なくて、かつ自己資金が潤沢にある場合などは創業計画でも借りられる場合がありますが、そうでなければ事業計画書を作成することが望ましいです。

事業計画は、経営者の略歴から事業内容や、損益の計画と資金繰りの計画が必要になり、作成するのは簡単ではありません。専門家に頼む場合は、コストが発生してしまうので、その意味ではデメリットとなります。

しかし、事業計画等を作成すること自体に価値があります。事業の成功率が計画があるのとないのでは、大きく違うからです。その点も含めて、デメリットとして考えるか、将来の事業計画を作成・検討する良い機会と捉えるのか、考えてみてください。

経営者保証等が必要なケースがある

場合によっては、融資を受ける際に担保や保証人などの保全が必要になるケースもあります。しかし、創業融資では制度上、無保証で借りられることも多いです。また、昨今は経営者保証なしの融資による創業支援を金融庁や経済産業省主導で推し進めています。

まとめ

最初に申し上げた通り、絶対、創業融資は借りないといけないものではありませんし、事業の性質や創業者のおかれた環境によっては、借りなくても良いケースはあるでしょう。

しかし、創業時には政策的に有利な制度があり、その制度を使えるのは、その方の創業時に限定されています。そのため、迷っているようでしたら、借りることをおすすめしています

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