クラウド会計の仕訳の登録・訂正・削除の履歴の確認方法

クラウド会計の良いところに、リアルタイムに更新できるところがあります。

仕訳が間違っていた場合に修正する際、多くのクラウド会計は上書きで修正し、保存することで即時に会計帳簿に反映されます。

これは大きなメリットでありますが、一方で電子帳簿保存法において留意すべき点があります。

令和3年の税制改正では、電子的に作成された国税関係帳簿や書類を電磁的記録で保存する際の税務署長の事前承認が不要になりました。会計帳簿は紙で保存することが原則ですが、この改正により、要件を満たしていれば、電子媒体で保存することが届出・承認を得ることなく、できるようになりました。

さらに、特定の国税関係帳簿を届出書を提出することで優良な電子帳簿として認定されると、過少申告加算税が5%軽減されるようになりました。

過少申告加算税は、税金を申告する際に、実際よりも少ない金額を申告してしまった場合に課される追加の税金です。つまり、本来納めるべき税金よりも少なく申告したときに、その差額に対してペナルティとして加算される税金のことを指します。

令和3年の税制改正では、特定の条件を満たす優良な電子帳簿に対して、過少申告加算税が5%軽減されることになったのです。適用するには届出が必要です。

この優良な電子帳簿を申請する場合の要件の1つに、

記載事項の訂正・削除を行った場合には、「これらの事実及び内容を確認できる電子計算処理システムを使用すること」という要件があります。

クラウド会計を使っている場合、最初に申し上げた通り、修正などが上書きによって簡単にできますが、この要件を満たすことはできるのでしょうか?

今回は、クラウド会計の仕訳の登録・訂正・削除の履歴の確認仕方をマネーフォワード会計のケースで確認していきたいと思います。

1.仕訳履歴保存機能

「仕訳履歴保存」機能の使い方

こちらのマネーフォワードのサイトにあるように、仕訳履歴保存の機能を使えば、仕訳の登録・訂正・削除の履歴を確認することができます。

以下の各種設定から、事業者の画面を選択し、中段くらいにある電子帳簿保存法の箇所にある「仕訳履歴保存機能を利用する」をチェックすることで使えます。

電子帳簿保存法対応をしない場合であっても、こちらの機能にはチェックをしておいた方が良いでしょう。

こちらの設定は、仕訳が1件でも登録されていると、年度途中で後からチェックを入れることができません。「仕訳履歴保存」機能を利用するためには、対象年度内に登録されている仕訳をすべて削除しないといけなくなるので、セットアップの際に注意が必要な項目の1つです。

2.仕訳の履歴の確認方法

① 仕訳の登録・訂正履歴の場合

仕訳帳の画面で仕訳の右側にある縦三点リーダーをクリックすると仕訳履歴詳細画面で履歴を確認することができます。

②  仕訳の削除の場合

仕訳が削除された場合は、仕訳帳には出てきません。そのため、仕訳帳の上に、「削除済仕訳履歴」というボタンがありますので、ここから履歴を確認します。

試しに、仕訳を削除してみますと以下のように削除された日時と操作者がわかるようになっています。

以上、クラウド会計を利用した場合でも、仕訳の登録・訂正・削除の履歴を確認する方法がありますので、他の要件を満たしていることを確認した上で、優良な電子帳簿として登録申請するのを検討されるのは良いでしょう。

 

インボイス制度に対応した会計ソフトの影響 ~勘定奉行クラウド編②

いよいよ10月1日からインボイス制度が開始されました。

今回も前回に引き続き、インボイス制度への対応で会計ソフトにどんな影響があるかを勘定奉行クラウドを中心にまとめていきたいと思います。

インボイス制度下では、インボイス発行事業者ではない事業者への支払いは、仕入税額控除の対象外になります。一方で、経過措置により令和5年10月1日から令和8年9月30日までに行ったものは仕入税額相当額の80%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までに行ったものは仕入税額相当額の50%を仕入税額控除の対象とすることができます(平成28年改正法附則52、53)。

このようにインボイス発行事業者でない事業者への支払い(ここでは、免税事業者と呼びます)に係る仕訳の起票方法はどうなるのでしょうか。

以下の勘定奉行クラウドの説明動画に沿って、補足しながら解説していきます!

1.仕入税額控除できない消費税を本体価格に含める運用

免税事業者から購入した費用について、仕入税額控除できない消費税額の処理方法は以下の2つがあります。

① 本体価格に上乗せする
② 決算整理仕訳等で雑損失へ振り替える

勘定奉行クラウドでは、免税事業者から購入した費用について、仕入税額控除できない消費税額を自動で計算し、本体価格の上乗せして仕訳起票される設定が推奨されています。

本体価格に上乗せしない処理をする場合は設定を変更する必要があります。

ここで注意点としては、勘定科目メニューにおいて、控除できない金額を本体価格に含めるためには「税込金額から計算する」という設定になっている必要があります。

2.公共機関特例等の適用の場合の運用方法

3万円未満の公共交通機関による旅客の運送に関して、インボイスの保存は不要で、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合があります。

この特例を適用する場合、帳簿へ以下の事項を追加記載する必要があります。

・公共機関特例や入場券等回収特例:帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる仕入に該当する旨(例:「3万円未満の鉄道料」、「入場券等」)

・3万円未満の自動販売機等からの商品の購入等:仕入れの相手方の住所又は所在地 「〇〇市 自販機」、「××銀行□□支店ATM」

勘定奉行クラウドで、この帳簿の記載事項に対応するためには、運用上、以下の2つの方法が考えられます。

① 補助科目で対応

補助科目に、「3万円未満公共機関利用」などを追加して利用する場合です。

他に補助科目を使っていない科目等であればこの対応でも可能です。

② 摘要欄に記載する

補助科目の対応だと、既存の補助科目にも該当して、かつ、インボイス制度対応の補助科目に該当する場合、運用上、どっちの補助科目を割り当てればよいか迷う場合あります。

その場合は、摘要欄に記載することで対応が可能です。

また、摘要欄で対応する方法を採用した場合、帳簿の記載事項の入力漏れに対応する方法として、「仕訳伝票チェック」機能を利用することができます。

摘要に入力し忘れた場合などにはこの方法により、自動チェック&一括修正が可能です。

3.入金時の支払い手数料の関する仕訳

自社で売掛金の入金時などの振込手数料を負担しているケースについて、その振込手数料を支払手数料で計上し、税区分を「課税売上の返還等」(または課税売上のマイナス)として処理することが推奨されます。

なぜならば、原則、この振込手数料に関してインボイスを入手することが困難・非効率であるためです。

売上げに係る対価の返還等に係る税込金額が1万円未満である場合には、当該対価返還等に関し適格返還請求書を交付する義務が免除されています。

したがって、従来通り、科目は支払手数料としつつ、税区分を「課税売上の返還等」(または課税売上のマイナス)へ変更することで対応することになります。

勘定奉行クラウドでは、補助科目で例えば「自社負担振込手数料」等の科目を新設し、科目設定で、デフォルトの税区分を「課税売上の返還等」(または課税売上10%)にしておくことでミスが生じにくくなります。

以上

インボイス制度に対応した会計ソフトの影響 ~勘定奉行クラウド編①

いよいよ10月1日からインボイス制度が開始されました。

そこで、今一度、インボイス制度への対応で会計ソフトにどんな影響があるかをまとめていきたいと思います。

今回は、勘定奉行クラウドを中心にまとめていきます。

インボイス制度下では、インボイス発行事業者ではない事業者への支払いは、仕入税額控除の対象外になります。一方で、経過措置により令和5年10月1日から令和8年9月30日までに行ったものは仕入税額相当額の80%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までに行ったものは仕入税額相当額の50%を仕入税額控除の対象とすることができます(平成28年改正法附則52、53)

このようにインボイス発行事業者でない事業者への支払い(ここでは、免税事業者と呼びます)に係る仕訳はどのように変わるのでしょうか?

以下の勘定奉行クラウドの説明動画に沿って、補足しながら解説していきます!

税区分の追加

これが最も大事なポイントです。

インボイス制度では、免税事業者との取引は、課税事業者の取引と区分して処理しなければならないということでした。

勘定奉行クラウドでは、免税事業者との取引かどうかは仕訳伝票上の税区分で最終的に判断するという方法をとっています。

会計ソフトによって対応方法は異なりますので、詳細は以下の過去ブログをご参照ください。

インボイス制度に対応した会計ソフトの影響 ~マネーフォワード会計編① 非適格事業者への経費等~

したがって、税区分で免税事業者との取引用のものが以下の通り、追加されました。

そのため、仕訳起票のつど、免税事業者との取引は税区分を変更して起票する必要があります。

この税区分の切り替え方法は、全部で3つあります。

1) 取引先マスタを指定

2) 補助科目を指定

3)仕訳伝票起票時に直接税区分を指定

これらいずれの方法で起票すればよいのか?という点について、

結論を申し上げますと、取引パターンに応じて変更するということになります。

その理由は後ほど、説明します。

まずは、それぞれの切り替え方法をご説明します。

1)取引先マスタを指定する

勘定奉行クラウド利用の約70%の事業者が取引先マスタ上で登録して管理する予定のようです。

現在、勘定奉行クラウドでは、取引先ごとに免税事業者と課税事業者を以下のように、マスター設定することができます。

取引先マスタで、適格請求書登録番号を入力しておけば、以下のように国税庁のサイトと自動照合して、課税事業者か免税事業者かどうかを正しく登録することができます。

その後の起票時に取引先マスタを指定することで、正しく税区分を起票することができるというメリットがあります。

また、取引マスタを指定することで、取引先ごとの債権や債務残高管理、取引量の管理といったこともできるというのは、(本来の目的で)有用です。

 

この取引先マスタの適格登録番号の登録方法には以下の3つがあります。

① 取引先をマスタに新規登録して登録時に個別チェック

取引先名を請求書を見ながらインボイス番号を事前に登録していくことができます。

その時、登録した時に国税庁のサイトに登録されていないければ「登録されていません」と出ますし、入力間違いの場合は、「登録番号を正しく入力されていません」とアラートが出てきます。

② 登録済みの取引先を一括でチェック

適格請求書発行事業者がその後、取消、失効となる場合等もありえます。

更新情報などを反映するためにワンクリックで登録番号が登録されているかどうかを確認することができます。

③ AI‐OCRでチェック

AI-OCRオプションに加入している場合は、利用した請求書をファイルのPDFファイルをアップロードすることができます。

この方法によれば、電子帳簿保存方法にも対応することができます。

自動的に請求書の内容を読み取って、登録番号を取引先マスタに登録してくれますので、ぜひとも利用したい機能です。

2) 補助科目を指定する

以下のように、補助科目で免税事業者かどうかを受けることができます。

補助科目設定で、税区分を紐づけておくことで、補助科目を指定することで正しい税区分を選択することができるようになります。

3) 仕訳伝票起票時に直接税区分を指定

これは、手修正で起票時に税区分を直接指定する方法です。

上記、1)2)の方法が使えない場合に使う方法ですが、手修正になるのでミスも生じる可能性高まりますし、作業量が多くなります。

4) どの方法によって税区分を選択するのがよいか?

なるべく、3)仕訳伝票起票時に直接税区分を指定する方法は、効率性の観点から避けたいところです。

そのため、原則、取引マスタで登録しましょう。

なぜなら、取引先があとから「取消」、「失効」になった場合などで免税事業者になった場合のチェック・税区分の一括変更が可能だからです。

しかし、交際費や個人タクシーなどの経費で、同じ取引先を頻繁に使わない、単発で生じた取引といったケースもあるでしょう。

しがって、取引パターンに応じて組み合わせるのが良いと思います。

  • 免税事業者との取引が継続して発生する科目:仕入など・・1)取引先マスタで指定
  • 単発の取引でかつ、免税事業者との取引が生じる場合がある科目:2)補助科目で指定
  • 単発の取引でかつ、免税事業者との取引が生じることは想定されない科目:3)直接指定

 

次回は、勘定奉行クラウドのその他のインボイス対応機能についてです。

 

これで安心!インボイス制度の総点検チェックポイント② 請求書受領側

インボイス制度が10月1日から開始ということで、いよいよ適用開始が迫っています。

インボイス制度開始直前のこの時期に、準備が行き届いているか総ざらいするためのチェックポイントをまとめました。

もし、まだ準備ができていない、足りていないところがあるのでは?と不安な事業者の方は確認してみてください!

今回は請求書を受領する側、つまり買い手の準備について確認していきます。
※ 課税事業者の方を想定しているため、免税事業者が適格請求書発行事業者になる場合の特例等は割愛しています。

チェックポイントと関連するFAQ(令和5年4月改定版)の番号を載せていますので、合わせてそちらもご確認ください。

1.請求書に関する現状把握

消費税の課税対象となる仕入取引・経費支払いについて、すべて請求書や領収書の受領があるかどうかを確認してください。

もし、契約書等のみで、都度都度、請求書等の受領がない取引があれば、インボイス制度後は適格請求書の受領するようにするか、もしくはそれ以外の対応でインボイス制度に対応する必要があります。

これは、値引きや返品についても同様ですので、そのような取引についても請求書等が受領されているか確認して、未受領の取引があるなら対応をするようにしましょう。

加えて、個人事業主等の免税事業者からの仕入・経費取引はインボイス制度後も発生する予定があるか検討してください。

これは、継続的に発生するもの、単発的に発生するものに分けて整理するとよいでしょう。

継続的に、発生するものとして例えば、

・個人不動産オーナーからのオフィスや賃貸物件の賃借取引

・デザイナーや記事制作に係る個人外注先

・販売代行等の個人事業者と取引

 

単発的に発生するものとして例えば

・個人タクシー

・飲食(免税事業者)

など、があります。

このような免税事業者等との取引については、インボイス制度開始後は課税仕入を取ることができません。

ただし、一定期間は経過措置があり、以下の一定割合を控除することができます。

帳簿の記載事項などは次回、詳細を解説します。

2.請求書受領時の対応

受け取った請求書や領収書がインボイスの要件を満たしているか、どのように・どのくらいの頻度で、誰が確認するのか、業務フローの検討ができているか確認してください。

特に適格請求書登録番号については、例えば、会計システム等の支払先マスタに取引相手の適格請求書発行番号を事前に登録しておき、起票時の都度都度の確認は省略するという方法もあり得ます。

国税庁の適格請求書登録番号の検索システムはAPIを公開していますので、Web-API連携を行い照合することも可能です。

加えて、家賃収入等で毎月の請求書は受領していない取引の場合については、契約書等で代用することも可能です。しかし、契約書等にインボイス制度で求められている項目が記載されているか確認することが必要になりますので、その点留意が必要になります。

 

また、受領した適格請求書は保存する必要があります。その保存方法についても忘れず検討してください。

もし、電子的な方法で受領した請求書の場合は、電子帳簿保存法の要件を満たした保存方法になっているか確認するようにしましょう。

以上、発行側のチェックポイントについてでした。次回は受領側の対応のチェックポイントについて、まとめていきたいと思います。

これで安心!インボイス制度の総点検チェックポイント① 請求書発行側

インボイス制度が10月1日から開始ということで、いよいよ適用開始が迫っています。

今回は、インボイス制度開始直前のこの時期に、準備が行き届いているか総ざらいするためのチェックポイントをまとめました。

もし、まだ準備ができていない、足りていないところがあるのでは?と不安な事業者の方は確認してみてください!

今回は請求書を発行する側、つまり売手の準備について確認していきます。
※ 課税事業者の方を想定しているため、免税事業者が適格請求書発行事業者になる場合の特例等は割愛しています。

チェックポイントと関連するFAQ(令和5年4月改定版)の番号を載せていますので、合わせてそちらもご確認ください。

1.適格請求書発行事業者の登録

適格請求書発行事業者の登録申請書は、原則2023年3月31日までに提出する必要がありました。まだ、適格請求書発行事業者になる予定の方で未提出でしたら、速やかに登録申請書を提出してください。

2023年10月1日から登録を受けようとする場合は、9月 30 日までに納税地を所轄する税務署長に登録申請書を提出すれば間に合います。

なお、2023年8月末時点で、登録事業者の件数は約350万件で、申請書の提出済みの件数が388万件です。

登録通知時期の目安は、e-Tax提出の場合は提出から 約1か月、書面提出の場合は提出から 約2か月となっているようです。

もし、登録通知が10月1日までに届かなかった場合の対応はFAQにありますので、そちらをご確認ください。

また、自社の登録番号の通知を受領したら、取引先にも伝達するようにしてください。取引先側でも、仕入側の登録番号を管理することが必要になってくるためです。

2.請求書に係る現状把握

消費税の課税対象となる売上取引について、すべて請求書の発行があるかどうかを確認してください。もし、契約書等のみで、都度都度の売上について、請求書の発行がない取引があれば、インボイス制度後は適格請求書の発行を行うようにするか、もしくはそれ以外の対応でインボイス制度に対応する必要があります。

これは値引きや返品についても同様ですので、そのような取引についても請求書等が発行されているか確認して、未発行であるなら対応をするようにしましょう。

次に、請求書が発行されている場合でも、それが適格請求書の要件を満たしているか確認してください。

適格請求書の記載事項は以下になります。

適格簡易請求書の場合は、主に⑥の書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称が省略可能という違いがあります。

もし、要件を満たしていない場合は、適格請求書が発行可能な外部サービスの利用やシステムの改修などの対応を検討することになります。

発行した適格請求書は保存する必要があります。その保存方法についても忘れず検討してください。

もし、電子的な方法で発行した請求書の場合は、電子帳簿保存法の要件を満たした保存方法になっているか確認するようにしましょう。

なお、中には例えば、家賃収入等で毎月の請求書は発行しないケースもあるかもしれません。

その場合でも必ず、請求書の発行が必要というわけではなく、契約書等で代用することも可能です。しかし、契約書等にインボイス制度で求められている項目が記載されているか確認することが必要になります。

以上、発行側のチェックポイントについてでした。次回は受領側の対応のチェックポイントについて、まとめていきたいと思います。

インボイス制度に対応した会計ソフトの影響 ~マネーフォワード会計編① 非適格事業者への経費等~

インボイス制度への対応で会計ソフトにどんな影響があるかをまとめていきたいと思います。

今回は、マネーフォワード会計を中心にまとめていきます。

インボイス制度が開始されると、インボイス発行事業者ではない事業者への支払いは、仕入税額控除の対象外になります。一方で、経過措置により令和5年10月1日から令和8年9月30日までに行ったものは仕入税額相当額の80%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までに行ったものは仕入税額相当額の50%を仕入税額控除の対象とすることができます(平成28年改正法附則52、53)

このようにインボイス発行事業者でない事業者への支払い(ここでは、免税事業者と呼びます)に係る仕訳はどのように変わるのでしょうか?

1.インボイス制度導入後の免税事業者に経費を支出した場合(経過措置が終わった後)

国税庁 令和3年改正消費税経理通達関係Q&A 問7によると、

問7 当社(9月決算法人、小売業)は、全社員の慰安のため、インボイス制度導入後である令和12年9月1日に免税事業者が営む国内の店舗において飲食を行い、その対価として11万円を支払いました。当社は税抜経理方式で経理しており、本件取引について支払対価の額の110分の10相当額を仮払消費税等の額として経理し、決算時に雑損失として計上しました。この場合の課税仕入れに係る法人税の取扱いはどうなりますか
〔支出時〕
(借方) 福利厚生費 100,000円 (貸方) 現金 110,000円
仮払消費税等 10,000円
〔決算時〕
(借方) 雑損失 10,000円 (貸方) 仮払消費税等 10,000円

 

回答:申告調整は不要です。

解説:インボイス制度導入後(令和11年10月1日以降)は、税務上は適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れについて仮払消費税等の額はないこととなるため、仮に法人の会計において仮払消費税等の額として経理した金額がある場合には、その金額を取引の対価の額に算入して法人税の所得金額の計算を行うことになります(新経理通達14の2)。
本事例においては、法人の会計上、1万円を仮払消費税等の額として福利厚生費と区分して経理していますが、税務上は仮払消費税等の額はないことになりますので、この1万円は福利厚生費の額に算入することになります。
ところで、本事例においては、福利厚生費の支出時に仮払消費税等の額として経理した金額を、決算時に雑損失として計上しています。この雑損失の額は、本来は福利厚生費の額に含めるべきものですが、いずれも当該事業年度の損金の額に算入されることについては変わりありませんので、結果的に税務調整は不要となります。

つまり、インボイス導入制度前では、仮払消費税等として計上できていた10,000円は、福利厚生費(上記の例では、雑損失)に含まれることになり、費用が増えます。

2.経過措置の間の仕訳(令和5年10月から令和11年9月まで)

経過措置がありますので、免税事業者への経費等の支払いに関して、支払対価の額のうちインボイス制度導入前の仮払消費税等の額に以下のパーセントを乗じた分が仮払消費税等として認めらます。

令和5年10月から令和8年9月まで 80%
令和8年10月から令和11年9月まで 50%

つまり、1.の説例で、考えるとインボイス導入制度前に比べて、令和8年9月までは、2,000円、令和11年9月までは5,000円、費用が増えることになります。

3.マネーフォワード会計の仕訳対応

まずは、STREAMEDさんのページにある各会計ソフトごとの対応の分類を見てみたいと思います。大きくわけて、2パターンあり、マネーフォワード会計は(1)のパターンです。

各ベンダーのインボイス対応を2つに分類すると以下となります。
(1)仕訳ごと(貸借ごと)に適格/非適格の情報を持つ形式
(2)非適格の税区分を追加し、税区分で判断する形式

 

(1)仕訳ごと(貸借ごと)に適格/非適格の情報を持つ形式

<仕訳イメージ>

仕訳ごと(貸借ごと)に適格/非適格の情報を持つ形式の仕訳イメージ

出力形式:STREAMED標準/マネーフォワード クラウド会計/弥生会計/EPSON財務応援R4/会計王/フリーウェイ経理/会計大将

(2)非適格の税区分を追加し、税区分で判断する形式

<仕訳イメージ>

非適格の税区分を追加し、税区分で判断する形式の仕訳イメージ

出力形式:freee/A-SaaS/TKC/発展会計/PCA/JDL/勘定奉行

実際にマネーフォワード会計の画面では以下のように変わっています。

デフォルトは「適格」にチェックがついており、免税事業者との取引の場合は、「適格」のチェックを外すという仕様です。

仮払消費税等が計上できない部分は、どの科目になっているかというと、上記の例でいえば、交際費に含めて計上されています。そのため、5,100円(本体価格5,000円+消費税等500円×(1-80%))となっているわけですね。

4.交際費の場合の注意点

交際費に関しては、少し注意しないといけないところがあります。

税務上の交際費から除かれる一人当たり5,000円以下の接待飲食費の判定についてです。

税抜経理を採用している事業者は10月1日以降、免税事業者の飲食店で飲食等を行った場合は、仕入税額控除の対象外となる金額を本体価格に足して判定しないといけない。

上記の例でいえば、5,100円を人数で割って、一人当たりの金額を算定して判定するというわけです。

各経過措置期間とその後の期間での、免税事業者の飲食店で店内飲食(適用税率10%)と持ち帰り(適用税率8%)の場合の5,000円の判定のボーダーは以下の通りになります。

 

税込金額での、交際費5,000円基準の判定は記帳時にパッと見て難しいため、一旦、会計ソフトに入れてみて計上金額が人数で割ったときに、5,000円以下かどうか判定して補助科目を選択するのが実務的な処理ではないでしょうか。

 

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