今回は、東京都世田谷区で創業を考えている方または創業1年以内という方向けに、世田谷区の制度融資について紹介していきます。
世田谷区の創業融資
世田谷区で開業する方が創業融資の選択肢として考えたいのは、「日本政策金融公庫の創業融資」と「世田谷区の制度融資」です。
日本政策公庫の創業融資
日本政策公庫とは、100%政府が出資する公的な金融機関であり、国の施策に基づいた融資や保証、資金調達の支援を行い、中小企業や地方自治体の施策にも積極的に協力しています。そのため、創業者にも積極的に融資を行っていますので、創業融資を受ける際にはまずは検討したい機関です。
全国に152支店(令和5年3月時点)あり、本店所在地のお近くの支店に申し込むことになりますが、世田谷区で事業を行う方は、渋谷支店が管轄となります。
制度融資とは?
制度融資とは、地方自治体(都道府県や市区町村)が金融機関や信用保証協会と連携して行う融資制度のことです。創業者が金融機関へ支払う利息や信用保証協会へ支払う保証料を地方自治体が補助することで、創業者がお金を借りやすいようサポートしています。
制度融資は各自治体によって条件が異なります。
ここからは、世田谷区の制度融資について紹介していきます。
世田谷区の制度融資
世田谷区の制度融資は、正式名称を「世田谷区中小企業融資あっせん制度」といいます。
世田谷区が金融機関に対して創業者を「あっせん」することで、創業者は好条件で融資が受けられるという制度です。
融資対象者
制度融資の対象となるのは以下の方です。
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法人 |
個人 |
創業前 |
・本店登記及び主たる事業所を区内に設けて創業しようとする方 |
・主たる事業所を区内に設けて創業しようとする方 |
創業後 |
・本店登記及び主たる事業所を区内に設けて、申込日現在、創業後1年未満の方 ・法人都民税及び法人事業税を滞納していないこと
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・主たる事業所を区内に設けて創業後1年未満である方 ・個人事業税を滞納していないこと |
ここでいう申込日とは、事業計画書が完成し、あっせん申込書に記載する日にちを言います。また、創業した日は法人であれば、設立登記をした設立年月日をいい、個人は「個人事業の開業・廃業等届出書」に記入した開業日です。
その他、以下の要件にも全て当てはまる必要があります。
・住民税の滞納がないこと
・東京信用保証協会の保証対象業種であること
・許認可等を必要とする業種の場合は、その許認可等を受けていること
・融資あっせんを受ける資金の使途が適正であり、かつ、資金及び資金にかかる利子につき十分な返済能力を有すること
融資条件
限度額 |
2,000万円 |
利息 |
0.1 %
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保証料 |
東京都の制度融資要件に合えば1/2 |
返済期間 |
7年以内(据置1年以内) |
担保 |
場合による |
保証人 |
法人:原則として代表者個人 個人:原則不要 |
日本政策金融公庫の融資が利率2.5~3%程度なのに対して、世田谷区の制度融資は、0.1%という非常に低い優遇された利率が特徴です。
制度融資の場合は、信用保証協会による保証が付くので、利息とは別に保証料を支払わなければいけません。保証料は通常1%弱程度ですが、世田谷区の制度融資を利用すれば東京都の保証料補助が受けられるので、保証料負担は2分の1で済みます。そのため、利息+保証料で考えて、調達コストは公庫の融資よりも低くなります。
制度融資の利用の流れ
①あっせん要件確認
世田谷区産業振興公社(以下、「公社」)に相談日時を予約のうえ、来所します。
公社相談員(中小企業診断士)が、創業支援資金あっせんの申込要件に該当するか否かを確認します。
※世田谷区産業振興公社の住所:
世田谷区太鼓同2-16-7(世田谷産業プラザ4階)
②公社相談員との面談(4回程度)
公社相談員の支援を受けつつ、創業者自身で創業計画書を作成します。並行して取扱金融機関に区の制度で創業融資あっせんを申し込む予定であること伝え、相談します。創業者が自分で金融機関を選んで、担当者に申し込むことの了承を得ておくことがポイントになります。
※曜日ごとに担当の創業相談員は決まっています。相談は、おおよそ4回程度で、申込者本人以外はできません。
③融資あっせん書の交付
公社から創業者へ融資あっせん書が渡されますので、相談した金融機関へ提出します。金融機関からの代理申請の場合もありますが、創業融資の場合は、創業者が自分で金融機関へ提出することが多いです。
④金融機関及び信用保証協会の審査・融資の可否決定
金融機関または東京信用保証協会が融資実行の可否等を決定し、申込者に通知します。
⑤融資可否等結果報告
金融機関は公社へ融資の可否等結果を回答します。
⑥利子補給
融資が無事に通ったら、区が利子の一部を補助します。
ここで注意すべきポイントは、①から③まで、通常は3か月程度かかるということです。
したがって、「今すぐにお金が欲しい」という方には、向きません。事前準備がしっかりできる方は、挑戦してみると良いでしょう。
制度融資のメリット・デメリット
メリット
資金調達コストが安い
公庫の融資と比べても利息及び保証料といった調達コストをかなり抑えることができます。他の融資にはないメリットといえるでしょう。
創業助成金の申込対象となる
東京都の制度で、創業者が上限300万円を貰える「創業助成金」という助成金があります。
創業助成金は申請要件があって誰でも申し込めるものではありませんが、要件の一つに、「制度融資を利用している」というものがあります。
デメリット
手間と時間がかかる
最大のデメリットが、融資実行までに時間と手間がかかるという点です。
あっせん書を出してもらうまでに世田谷区の公社に5~6回程度足を運んで、何度も相談員と面談を重ねなくてはいけません。
公庫の融資の場合は申し込みから3週間程度で入金まで進みますが、制度融資ですと3か月程度かかってしまいます。
また、必要な書類も多く、世田谷区・金融機関・信用保証協会それぞれ求めてくる書類も異なりますので、かなりの手間がかかります。
まずは公庫で融資を受けておいて、後から制度融資も利用するという進め方もアリかと思います。