日本政策金融公庫で創業融資はいくらまで借りられるのか

今回のテーマは、日本政策金融公庫の創業融資制度では

いくらまで借りられるのか?というテーマについて解説します。

日本政策金融公庫の創業融資

日本政策金融公庫とは、政府が100%出資している金融機関のことです。
民間の金融機関を補填する役割を担っており、民間のプロパー融資が受けづらい創業者に対しても積極的に融資を行っています。

日本政策金融公庫で創業融資を受ける際には、ほとんどの場合、新創業融資制度という制度を使います。これは、創業者が無担保・無保証で借入できるという、かなり魅力的な制度です。

創業融資はいくらまで借りられるのか?

新創業融資の制度上では、借入の上限金額は3,000万円(運転資金の場合は1,500万円)です。

では、上限額いっぱいまで借りられるのかというとそうではありません。稀に上限まで借入できるケースもありますが、医者等の確実性の高い事業に限ります。

また、新制度での融資限度額は7,200 万円(うち運転資金 4,800 万円)と大幅にアップする予定という話は前回のブログで紹介させていただきました。

新制度で上限が大きくアップされた後でも同様なのではないかと思いますが、創業者向けとして、現実的な借入額は1,000万円までが現実的なラインではないかと思います。

というのも、日本政策金融公庫の場合、支店決済で融資を決定できる限度が1,000万円だからです。

1,000万円を超えると、本部決済となるため、融資審査のハードルが段違いに上がります。
そのため、1,000万円までというのが実務上の借入の限度ラインです。

多額を借りたい場合はどうするのか

とはいえ、1,000万円以上の資金を借りたいという方も多いと思います。
そのような場合どうしたら良いかというと、日本政策金融公庫と制度融資(市区町村が民間の金融機関と連携して行っている融資)を合わせて申し込むということです。

これを、協調融資と言います。

日本政策金融公庫に申込みを行った際に協調融資をお願いしてみましょう。

日本政策金融公庫と民間の金融機関の双方から借入することで、1,000万円を超えて融資を受けることが可能です。

まとめ

今回は、日本政策金融公庫で創業融資はいくらまで借りられるのかというテーマについて紹介させて頂きました。

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最後まで読んで頂きありがとうございました。

日本政策金融公庫の創業融資制度が 拡充されました

日本政策金融公庫は、2024年4月1日にスタートアップ融資制度を拡充しました。

それに伴い、今まで創業者に一番利用されていた「新創業融資制度」という名称はなくなることになりました。旧「新創業融資制度」の対象者向けの新たな創業融資制度の名称はというと、特にないです。

公庫のホームページには「新規開業資金を無担保・無保証人で、新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方がご利用いただく場合」となっています。

この新たな創業融資制度の拡充ポイントは下記の通りです。

1.自己資金の要件がなくなった!

旧「新創業融資制度」では、自己資金の要件として

「新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方」

となっていましたが、新制度では、自己資金ゼロでも申し込むことができます。

2.融資限度額が大幅拡充!

旧「新創業融資制度」では、融資限度額は、3,000 万円(うち運転資金 1,500 万円)となっていましたが、新制度での融資限度額は、7,200 万円(うち運転資金 4,800 万円)と大幅にアップしています。

3.運転資金の返済期間が延長!

旧「新創業融資制度」では、設備投資に使う資金は原則20年以内、運転資金は7年以内の返済となっていましたが、新制度の運転資金の返済期間は原則10年以内と延びました。

4.据置期間も延長!

据置期間とは、「返済せず利息だけ支払う期間」のことです。

旧「新創業融資制度」では、最長2年以内でしたが、新制度の据置期間は最長5年以内と延びました。

5.制度の内容と審査は別物

新制度においていろいろと拡充されたように見えます。

しかし、この内容が実際に審査に反映されるとは限りません。

旧「新創業融資制度」においても融資限度額は3,000万円となっていましたが、実務上では3,000万円の融資をしてもらえるケースはとてもレアで、そのほとんどが1,000万円以下でした。

また、旧「新創業融資制度」において、自己資金の要件は「新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方」となっていましたが、実務上では10分の1の自己資金では、審査はほぼ通っていませんでした。

「自己資金ゼロでも、融資希望額が7,200万円でも申し込むことは可能ですが、それが審査で通るとは限らない」ということは、よく認識しておく必要があるでしょう。

今後、この新制度になってどうような影響額があるかは注目しておく必要があるでしょう。

創業融資はどこに申し込むべきか

今回は創業融資をどこから借りるべきかというテーマです。

創業融資を借りようと思ったときに金融機関選びは非常に大事になってきます。

なぜなら、金融機関との付き合いは創業融資の時だけではないからです。創業融資を返済すれば関係が途絶えるということはなく、その後、事業運営をしていく中で、長い付き合いになるからです。

したがって、長い付き合いになる取引相手をどこにするかは慎重に選ぶ必要があります。

※ このブログの中で、地元密着型金融機関という場合は、第二地方銀行や信用金庫・信用組合を指します。

1.【民間金融機関の5形態】

つきあうべき金融機関と避けるべき金融機関を考えるにあって、まずは金融機関の分類をご説明します。

各金融機関の取引先の年商のボリュームゾーンは以下の通りです。

  • 都市銀行(50億円以上)
  • 地方銀行(30億円以上)
  • 第二地方銀行(3億円~10億円)
  • 信用金庫(3億円以下)
  • 信用組合(1億円以下)

大手銀行(都市銀行・地方銀行)は、「収益性・効率性」を重視するため、中小・零細企業はほとんど相手にすることはありません。事業の状況が好調のときには、手間もかからず、ある程度収益も確保できるため、ちやほやしてくれますが、業況が悪くなると、自己保身のため、手のひらを返した扱いをされることもあります。つまり、いざというときには、(中小企業にとって)頼りにならないのです。

一方、第二地方銀行や信用金庫・信用組合といった地域密着型金融機関は、「関係性」を重視するため、正しくつきあっていれば、いざというときに応援してくれます。なぜなら、法律上、設立している趣旨が【地域の相互扶助】ためだからです。

そのため、自社の年商を考えて、つきあうべき金融機関を選定していただく必要があります。その結果、創業時につきあうべき金融機関は、地域密着型金融機関を選定することが必然となります。

2.地域密着型金融機関は味方

地域密着型金融機関の現場の人間は、基本的には経営者の味方です。もちろん、地域密着型金融機関の担当者もノルマがありますが、地元の貢献を考えてくれ、血が通った取引できることが多いです。

そのためにも、積極的に情報開示を行い、早め早めに相談することが大事です。問題があったらすぐに相談しましょう。

実際あったのは、熱意のある金融機関の担当者が信用保証協会の結果さえもひっくり返して融資をねじ込んでくれたことがありました。

公庫から創業融資を借りた際の入金口座もこのような地元密着型金融機関の口座にするとよいでしょう。

3.法人の新規取引について

金融機関は新規の法人取引は基本的には避けたがる傾向が強いです。大きい金融機関になればなるほど、創業者の口座を作りにくい傾向にあります

特に最近の金融機関は、新設法人の場合のチェックが厳しいです。大手の銀行では、マネーロンダリングや反社会的企業チェックも機械的に行いため、エゴサーチが難しい傾向のある創業会社との相性が良くないのです。

一方、地元密着型金融機関ももちろん開設時のチェックは行いますが、中身(事業実態)を見てくれます。

例えば、新設する場合に必要な資料として、定款や謄本はもちろん必要になりますが、さらにHPがある場合であれば、ない場合に比べて、かなり扱いが違います。HPを印刷した紙をもっていくことも重要です。
また、その法人の事業実態があるかを重視してくれますので、事業計画の提出をすると有効です。マネーロンダリングための法人のためにわざわざ事業計画作ることはないかですよね。なので、事業計画を作って、このような形で事業しますと示すのが有効なのです。

また、誰かに間に入ってもらい紹介してもらうというのも、事業実態をサポートすることになるでしょう。

4.創業融資はどこに申し込むべきか

士業やコンサルタントの創業支援サポートでは3つのサポートがあると考えています。

1.日本政策金融公庫からの創業融資サポート

2.民間金融機関からの創業融資サポート

3.1年後に不足する運転資金を調達可能にする土台づくりのサポート

特に私は、このうち3のサポートが大事だと考えます。創業融資のご相談をいただいた場合、基本的な流れとしては以下です。

基本的には、日本政策金融公庫を申し込んでいただき、それが出来れば提携融資を申し込みます。提携融資が出来ないケースでも、公庫から借りることができたら、その足で創業融資に積極的な金融機関に行き、少額の創業融資を申し込みます。公庫の融資実績があれば、民間金融機関も貸しやすいからです。

そうやって、結果的に創業融資をネタに、民間金融機関との融資取引をはじめることができます。それが、1年後に待っている運転資金の不足の際の融資を引き出す関係性を作るきっかけになってくるのです。

士業やコンサルタントの融資支援サポートを受ける場合も、最初の公庫や民間金融機関の創業融資だけではなく、将来の取引関係構築を想定しているサポートを受けるべきだと思います。

補足:複数の金融機関と付き合う

会社の状況にもよりますが、複数の金融機関と付き合うのも以下の観点から有効です。

1.リスクヘッジ

金融機関の担当者は正直辺り外れもあります。担当者だけではなく、上席者とのパイプを形成しておくということも大事ですが、複数の金融機関と取引がある場合はリスクヘッジになります。

2.金融機関との交渉を有利に進める

金融機関内部での各支店の業績評価が最も悪くなるのは、「他行への借り換え」です。これをされると、査定が大幅に悪化します。そのため、複数の金融機関と取引することで、金融機関との話を有利に進めることができます。

新設法人の銀行口座開設

日本政策金融公庫の創業融資が認可されると、銀行口座を開設しやすくなります。

こんにちは。公認会計士のカマタタイシロウです。

以前のブログでは新設法人の金融機関口座開設に、

「事業実態があることに説得力を持たせる」ことの重要性をお伝えしました。

しかし、それでも口座開設を断られてしまう可能性があります。

今回は、新設法人の銀行口座開設方法の追加版をお伝えします。

1.【現状】1年未満の新設法人は銀行口座を作りにくくなっている

前回ブログをさらに深掘りしてお伝えしたいのは、

「今は多くの金融機関で設立1年未満の新設法人は口座開設が難しい」ということです。

金融機関が新設法人の口座開設に慎重なのは、その口座がマネーロンダリングなどの反社会的勢力に利用されるのを防ぐためです。

銀行は口座開設を依頼されると、その法人が反社会的勢力かどうかを判断するため、「事業実態」を細かく把握しようとします

その把握には手間がかかるし、明確な判断基準が設定しづらいため、最初から「新設法人の口座は開設しない」方針の金融機関が多いのです。

2.設立1年以上の法人は口座を作りやすい

しかし、設立1年以上の法人だと、状況は変わります。

設立して1年を経過すると、企業は「決算書」を作成します。

その決算書を見ることで金融機関は事業実態を容易に把握できるため、設立後1年を経過した企業の口座の開設は、前向きに検討してもらえることが増えます。

反社会的勢力の目的は銀行口座の作成ですから、いちど作成できればその企業・事業の維持は考えていません。

真っ当な事業活動は行っていませんので、費用と手間をかけてまで決算書を作成することもしません。

また、決算書を見れば、事業をきちんと行っている会社なのかは一目瞭然です。

決算書内容の分析で、経営内容を詳細に理解することもできます。

設立1年以上の法人が銀行口座を作りやすい理由は、そこにあります。

ただ、普通は1年も銀行口座開設を待てないでしょう。

3.【対策①】公庫に創業融資を申し込んで内諾されてから口座開設を依頼

そこで、あまり知られていませんが、設立1年未満の新設法人が銀行口座を開設する方法として、以下の手順があります。

① 日本政策金融公庫に創業融資を申し込む

② 可決されてから金融機関に口座開設依頼をする

もちろん、この方法は、これから創業融資を必要とする新設法人ならという話です。

「銀行口座がないのに公庫に創業融資を申し込めるの?」

と疑問に思う創業者もいるかもしれませんが、銀行口座がなくても、公庫の創業融資は申し込めるのです。

公庫に創業融資を申し込むとき「借入申込書」(インターネット申し込みの場合は不要)を提出するのですが、その借入申込書には、(返済金の)引き落とし用銀行名は必須ですが、口座番号を記載する箇所はありません。

私が日本政策金融公庫担当者に確認したところ、

「現在、口座作成の交渉をしている金融機関名を書いてください。万一、金融機関が変更になれば、わかり次第ご連絡いただければ結構です。融資の認可から実行までの間に口座が作成できていれば大丈夫です」とおっしゃっていました。

創業融資を申し込んで可決された「後」、公庫には「金銭消費貸借契約証書」を提出しますが、その時点で銀行口座があればよいのです。

4.創業融資可決=銀行口座を作りやすくなる理由

公庫が創業融資を可決した事業者なら、金融機関も事業実態や反社会的勢力ではないことは公庫が確認済みと判断できるため、口座開設を断る理由はなくなります。

公庫から創業融資の認可をもらえば、信用金庫や信用組合なら、よほどのことがない限り口座開設に応じてくれるでしょう。

5.信用金庫・信用組合への新設法人口座開設の会話例

創業者の方は銀行(できるだけ第二地方銀行・信用金庫・信用組合などの地域密着型金融機関)に足を運んでもらい、次のように話してみてください。

創業者:「日本政策金融公庫から創業融資の認可をいただきました。つきましては、公庫に着金/引き落とし口座を伝える必要があります。貴庫/貴組の金融機関を指定したいので、口座開設をお願いします」

6.【対策②】銀行口座がなくても協調融資も申し込める

公庫に創業融資を申し込むとき、口座開設したい意中の金融機関との「協調融資」を申し込むことも可能です。

その金融機関の口座がなくても、当該金融機関は協調融資の手続きを進めてくれます。

協調融資ではほとんどの場合、

「地方自治体の創業融資(信用保証協会の保証つき)」での取り扱いになり、創業融資に関する審査は保証協会に任されます。

保証協会に対して当該金融機関が創業融資の審査依頼を行うとき、銀行口座は必要ありません。

協調融資の場合も、その金融機関に口座がなくても受け付けてもらえるのです。

7.日本政策金融公庫で引き落とし口座が設定できるネット銀行

日本政策金融公庫の創業融資の認可をもらっても、地元の金融機関が口座開設に応じてくれなければ(めったにないと思いますが)、ネット銀行で法人口座を開設する方法もあります。

ネット銀行はリアル金融機関に比較すると、新設法人口座を開設しやすいですね。

事業実態の調査にかける時間や手間はリアル銀行ほどではなく、ほぼ書類だけで判断するため、書類が整っていれば口座開設してもらえる可能性が高いのです。

私のおすすめのネット銀行は以下の2つですが、これらのネット銀行は以前なら日本政策金融公庫の引き落とし口座の設定はできませんでしたが、今はその設定ができます。

●GMOあおぞらネット銀行
公庫からの借入金の返済以外にも社保引き落とし、ダイレクト納付等の支払いにも対応するのが特徴です。

●Paypay銀行
振込手数料が安いことが特徴です。

創業融資の「次の融資」(創業融資より審査ハードルが上がる)を考えると、口座開設は地元の地域密着型金融機関(第二地方銀行・信用金庫・信用組合)が理想的ですが、

それが難しい場合は次善の策として、上記ネット銀行での口座開設も検討しましょう。

まとめ

今までの順番は、「①金融機関での口座開設」⇒「②創業融資の申込み」でした。

しかし、今後は創業者が事業用の新規口座を作りにくくなるため、

「①創業融資の申込み」⇒「②認可」⇒「③金融機関での口座開設」の順番も1つの方法としてあり得ます。

公庫からの創業融資から3年以内の追加融資は難しい!? ~ 民間金融機関との信頼関係の作り方~

先日、こんなご相談がありました。

「1年前に公庫で創業融資を借りた。その後、初期投資等が想定よりかかったため、計画よりキャッシュアウトが多く、資金が十分ではなくなってきた。ここで追加融資が借りられれば、事業に集中することができて、軌道に乗せられそう。しかし、公庫からは追加融資の依頼を謝絶されてしまった。どうしたらよいか?」

一般的には創業時に借りた公庫に、創業融資の次の融資もお願いするでしょう。

しかし、公庫には「暗黙の了解」があり、断れてしまうことがあります。

それは、創業融資を借りて3年も経っていない事業者に対して、一部の例外を除き、公庫は追加で貸さないというものです。

なぜ日本政策金融公庫は、創業融資の「次」の追加融資に渋いのでしょうか。それに備えてどんなことをすればよいでしょうか?今回はこのテーマを考えていきたいと思います。

1.公庫が創業融資後の追加融資に応じない理由

日本政策金融公庫が、創業融資後の追加融資に前向きに応じてくれない理由は、こんな暗黙の了解があるからです。

「半分以上返済が進まなければ追加の融資をしない

公庫での創業融資は資金使途別に返済は以下の期間であることが多いです。

  • 運転資金:5年
  • 設備資金:7年

半分以上返済がおわるタイミングは、据置期間を設定しなかった場合、運転資金で2年半、設備資金で3年半です。

この間に公庫融資を申し込んでも、「半分返済が終わっていないと、新規融資は難しいです」と、門前払いされる可能性が高いです。

2.なぜそんな「暗黙の了解」があるのか?

創業セミナー等で聞くこととして以下の話があります。

創業者の3割は1年以内に廃業し、5割は3年以内に廃業する。10年後に残る企業は1割」

実際は、このデータの根拠を私はまだ見たことなく、ここまで廃業リスクは高くはないとは、肌感覚として思いますが、会社設立の経緯も様々ありますので、遠くはないのかもしれません。

創業時の融資判断の材料としては、以下の3つです。

  1. 自己資金
  2. 経験年数
  3. 創業計画書の内容

しかし、創業後6ヶ月を超えると、「実績」を重視していきます。その事業としての結果が見えてきているのですから当然です。

事業計画通りの収益確保ができず、資金繰りが悪化している事業者は、融資判断材料として決算書等による形式審査で「追加融資はできません」と断られることになってしまうのです。

3.例外的に公庫が追加融資に応じる場合

ただし、すべての企業が追加融資を断られるわけではありません。例外はあります。

公庫が創業後の追加融資に応じやすいのは、以下のような事業者です。

  • 業績が計画を超過しており、売上増加傾向
  • 更なる売上増加のために必要な「運転資本」の増強や「設備資金」等の投資が必要

売上や収益が計画よりも上回り、今後も伸びていく可能性が高ければ、公庫は低リスクと判断して融資に前向きに取り組んでくれます。

4.公庫に断られた後、民間金融機関でも貸してくれない

公庫に断られると、次に行くのは民間金融機関です。
しかし、それまでつきあいのなかった近所の金融機関に出向いて急に融資を依頼しても、まず断られます。
今までまったく取引がない事業者は、金融機関にとって「まったく情報のない相手」であり、リスクが高いと考えるからです。

民間金融機関の中には、事業性融資に積極的な金融機関もいて、そのような金融機関は以下のような情報を求めています。

●業種・規模など事業内容
●ビジネスモデルの安定性・将来性・社会性
●売上などの収支推移、財務状況
●経営者の事業への考え方や性格 など

しかし、このような情報がない起業が「資金繰りが苦しく運転資金を貸してほしい」と依頼しても、金融機関は「創業した事業がうまくいっていない企業」として融資リスクの高い事業と見なします。

そんなリスクの高い、今まで知らなかった企業に貸さなければならない理由はなく、融資に応じてもらうのは難しいでしょう。

5.民間銀行から貸してもらえる/もらえない企業の違い

では、創業3年以内/低業績の企業が新規融資を得られないのかというと、そんなことはありません。

たしかに公庫なら、少なくとも半分を返済しないと追加融資には応じませんが、民間金融機関の場合、融資してもらえるように状況を変えることは可能です。

縁もゆかりもない中小企業がいきなり「融資してほしい」金融機関に行っても断られますが、縁もゆかりもある中小企業なら、積極的に対処してもらえるのです。

6.民間金融機関との信頼関係の作り方

たとえば、同じような2つの中小企業A、Bを想像してみましょう。

  • A社・B社は、ともに創業3年目・経常赤字
  • A社は、C信用金庫との取引なし
  • B社は創業時に公庫と同時にC信用金庫からも創業融資あり。月に1度、担当者の訪問あり

銀行の担当者はB社の事業内容・業況をよく把握しているので、これら2つの中小企業がほぼ同時にC信用金庫に融資を申し込んだ場合、財務内容がほとんど変わらなくてもA社は融資を断られ、B社の案件は前向きに取り組んでもらいやすいのです。

なぜ、このように結果に差が出るのでしょうか?

それは、金融機関にとって融資審査時の判断材料の差です。

A社の融資審査を行うための判断材料は「財務内容(決算書・試算表)」しかありません。

それに対し、B社なら上記に加え、以下のような情報があります。

  • 理念、ビジョン、細かな事業内容
  • 事業計画、予算
  • 予算実績対比、進捗状況
  • 信用金庫に対する寄与度
  • 今後の事業の見込み/将来性/社会的な活動
  • 経営者の考え方・性格

このような多くの情報があると信頼度が高まります。信頼度が高ければ、金融機関はその企業を何とか助けようと努力してくれます。一方、これまでつきあいのなかったA社を助ける「義理」も「義務」も、C信用金庫にはありません。

財務内容だけみて、あえてブラックボックスの中に手を突っ込むような真似は金融機関はしません。

7.まとめ「銀行からの信用は日ごろのコミュニケーションから」

事業者の業績が悪化し資金繰りが厳しくなれば、たいてい日本政策金融公庫に追加融資を申し込みます。しかし前に借りたのが2年以内だったり(直近の融資からまだ2年しか経っていない)、融資枠いっぱいまで借りたりしている場合は、公庫は追加融資には応じません。

その時点で今まで取引のなかった民間金融機関を頼っても、期待する対応は得られないでしょう。一方、懇意にしている民間金融機関を確保していれば、何とか融資しようと努力してくれます。

民間金融機関から融資してもらえる事業者になるには、その金融機関との良好な関係を構築し、普段からコミュニケーションをとっておくことが重要です。

 

 

創業計画書の「創業の動機」ってどう書くべきか?

今回は、創業計画書の「創業の動機」ってどうやって書くのかというテーマについて紹介させて頂きます。

創業の動機とは?

創業融資を受ける際に提出する創業計画書の中には、「創業の動機」という項目があり、創業するに至った背景や動機について記載する必要があります。

以下が日本政策金融公庫の創業計画書の記載例です。

これを見ると、この例のように簡単に書けばよいのかと思ってしまいますね。

ところが、そうではないのです。

創業の動機の書き方

創業の動機の項目では、金融機関は何を見ているか?

それは「創業にかける本気度」「事業の継続可能性」を評価する観点で見ています。

本気度や事業の継続性について、金融機関に評価してもらうためには、以下のようなポイントを押さえてください。

①準備状況
②経験
③熱意
④見込み

それぞれ順に説明していきます。

①準備状況

金融機関に計画性をアピールします。
たとえば、「かねてより創業に向けて自己資金を貯めており、この度目標額まで貯金が溜まったことから・・・」といった記載があれば、創業に対する真剣さや計画性をアピールすることができます。

事前準備がしっかりしている印象があれば、返済も問題ないのではないかという評価につながります。

②経験

経験は、2 経営者の略歴等で、記載するので、ここでは厚く記載する必要はありませんが、過去経験をアピールするのは大事な観点です。

「日本料理店の店長として10年間の経験があり、独立の為に必要なスキルを習得したことから~~」といった記載があれば、起業に対する真剣さも伝わります。

③熱意

起業にかける思いを記載しましょう。金融機関の担当者も「人」です。あなたの事業に対する想いや過去の経験、力になりたい人やそのエピソードを読んで、応援したいと思ってもらうことが大事です。

④見込み

今後の収益の見込みをアピールできると良いです。たとえば、「無料セミナーで30人集まったことから、開業を決意した」、「ブログの登録者のリストが100人集まり、集客の目途が見えたため開業を決意した」みたいなことが言えれば、創業当初の売上の根拠を示すことができるので、審査上有利な材料になります。

印象が悪い創業の動機

逆に、以下のような創業の動機は、シンプルに印象が悪いので書かない方が良いです。

  • 思い付きで始めた
  • 人から言われて始めた
  • 会社員が嫌で起業した
  • 儲かりそうなビジネスだから起業した

あえて直接的に上記のような文章を書く方はいないと思いますが、こう読み取られてしまうような動機はNGです。

まとめ

いかがだったでしょうか。
今回は、創業計画書の「創業の動機」の書き方と重要性について紹介させて頂きました。

創業融資の際に何から手を付けたらよいか迷うことがありましたらお問い合わせフォームからご気軽にご連絡ください。

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今年度まで!? 東京都の創業融資【女性・若者・シニア創業サポート事業】 

以前のブログでも紹介している東京都が実施している「女性・若者・シニア創業サポート事業」は今年度までになるかもしれません。

来年度も継続するかどうかの情報は、このブログ更新時点では出ていないですが、すでに12月で申込みを終了している金融機関もあるそうです。

ということで、今回はいま一度、こちらの制度について紹介していきたいと思います。他の融資制度との比較も行いますので、ぜひご参考ください。

◆ 女性・若者・シニア創業サポート事業とは?

東京都が実施している創業融資の制度です。
女性、若者(39歳以下)、シニア(55歳以上)を対象に、優遇された融資が受けられる制度です。

女性・若者・シニア創業サポート事業 (cb-s.net)

⊳ 特徴

以下の点が特徴の融資制度です。

  • 信用金庫などから低金利(1%以内)・無担保で融資を受けられます
  • 税理士などのアドバイザーによる原則3回までの個別相談が可能です
  • 事業計画について、アドバイザーとの面談を基に作っていくことができます。
  • 融資実行後も、アドバイザーの経営アドバイスや融資後の決算時に、税理士が無料で決算書作成のアドバイスをしてくれます
  • 東京都の創業助成金の申込要件を満たすことができます
https://cb-s.net/tokyosupport/business/

⊳ 対象者

次のすべてを満たす事業者が対象となります。

  • 女性、若者(39歳以下)、シニア(55歳以上)で、創業の計画がある者又は創業後5年未満の者(代表者)
  • 個人事業主、株式会社、合同会社、一般社団法人、NPO法人 等
  • 東京都内に本店又は主たる事業所を置く創業事業であること
  • 地域の需要や雇用を支える事業であること

⊳ 融資条件

融資限度額 1,500万円以内(運転資金のみは750万円以内)
利率(年) 固定金利1%以内
返済期間 10年以内(うち据置期間3年以内)
担保 無担保
保証人 法人:代表者個人保証または不要

個人:不要

◆ 融資実行までの流れ

⊳ 取扱金融機関に相談

以下の相談窓口のうち、付き合いのある金融機関(なければ最寄りの金融機関)にお電話して、「東京都の女性・若者・シニア創業サポート事業を受けたい」と相談してみてください。

金融機関の担当者と個別相談の上、本事業を利用することになりましたら、創業者の方で事業計画書を作成して金融機関へ持っていきます。(金融機関所定の事業計画書フォーマットがあればそれに従うことになります。)

⊳ 地域創業アドバイザーとの面談予約

金融機関が事業計画書を確認後、地域創業アドバイザーとの個別面談がセッティングされます。

金融機関が地域創業アドバイザーを紹介してくれるので、紹介日から10日以内にアドバイザーと連絡を取り、面談の予約を行います。

⊳ 地域創業アドバイザーとの面談

地域創業アドバイザーと面談を行い、事業計画についてのアドバイスを受けます。
事業計画がブラッシュアップされたら、金融機関へ融資の申込を行うことになります。

⊳ 取扱金融機関への融資申込

地域創業アドバイザーの案内に従い、取扱金融機関に対し、面談終了日から10日以内に融資申し込みを行います。

⊳ 融資審査

金融機関が融資審査を行います。
なお、アドバイザーがOKと言ったからといって、必ず審査に通るわけではありません。

⊳ 融資実行後

地域創業アドバイザーが、融資実行後の経営サポートを行ってくれます。

◆ 他の融資制度との比較

東京都の創業者が利用できる融資制度としては、実質以下の3択です。

  • 日本政策金融公庫の融資
  • 市区町村の制度融資
  • 女性・若者・シニア創業サポート事業

それぞれの特徴の比較を以下にまとめてみました。
※ 区の制度融資は、それぞれの区で若干違うので、あくまでも私の主観ですが

日本政策金融公庫 東京23区の制度融資 女性・若者・シニア創業サポート事業
利率 2.28~3.25% 0.2%~ 1%以内
保証料 なし 0~0.5%程度(東京都が1/2~全額補助) なし
担保 無担保 無担保 無担保
保証人 不要 法人:代表者個人保証が必要な場合もあり
個人:なし
法人:代表者個人保証が必要な場合もあり
個人:なし
融資実行までの時間 2~3週間程度 2~3か月程度
(事前面談・相談あるため)
2~3か月程度
(事前面談・相談あるため)
手間 少ない 多い 多い

「女性・若者・シニア創業サポート事業」はやはり、保証料なしで、金利も1%以内というところが最大のメリットです。

しかし、事前準備やアドバイザーと一緒に事業計画を作成していく過程に時間を要します。

また、東京23区の場合は、区の制度融資が充実しているので、そちらの方が好条件ということも少なくありません。

まずは事業をされている区の制度と比較してみてご検討されるのが良いでしょう。

おわりに

いかがだったでしょうか。

今回は、東京都の女性・若者・シニア創業サポート事業について紹介させて頂きました。

今年度で終わる予定で、来年度に継続するかどうかは現時点では未定です。金融機関によっては12月中で申込みを終了しているケースもあるようですので、申込みを希望する方は、お早めに近隣の金融機関にご相談してみてください。

お住まい・事業されている区の制度融資との比較など判断に迷ったり、ご不明点などがありましたらお問い合わせフォームからご気軽にご連絡ください。

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創業5年以内の方、限定!東京都の制度融資

今回は、創業5年以内の方が使える東京都の制度融資について紹介していきます。

◆ 東京都の制度融資

東京都の制度融資のうち、創業融資は、通称「創業」という名前で設けられています。

令和5年度の東京都中小企業制度融資に関しては、以下リンクのP33にまとめられています。
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/chushou/yuushiannai.pdf

創業者は、しばしば金融機関からの信用を得ることが難しいため、国や地方公共団体が補助を行ってくれます。それが制度融資の仕組みです。

市区町村での制度融資と同様に、東京都でも独自の制度融資の仕組みがあります。

◆ 融資対象

東京都の制度融資(創業)を受けるためには、次の(1)から(3)のいずれかの要件を満たす必要があります。

(1)創業前

  • 事業を営んでいない個人、かつ
  • 1か月以内に新たに個人でまたは2か月以内に新たに会社を設立
  • 東京都内で創業しようとする具体的を有する者

(2)創業後

  • 中小企業者又は組合
  • 創業した日から 5 年未満である者
    ※ 個人で創業し、同一事業を法人化した者で、個人で創業した日から 5 年未満を含む

(3)分社化

  • 東京都内で分社化しようとする具体的な計画を有する会社または分社化により設立された日から5年未満の会社、かつ
  • 中小企業者であること

創業した日の定義

ここでいう「創業した日」とは、原則として法人の場合は設立登記の日、個人の場合は税務署に提出した開業届の開業日です。

※ 開業した日は、地方自治体ごとに解釈が異なり、中には「売上が発生した日」のように実際に事業を始めた日とするところもあるので、利用する自治体に確認してください。

ご利用いただける方の条件

また、上記要件に加え、以下の融資の基本条件についても満たしておく必要があります。

(1)東京都内に事業所(個人事業者は事業所又は住居)を有し、保証協会の保証対象業種に属する事業を営んでいること。ただし、一定の業歴要件が必要となる場合がある。

(2)当該事業を営むために許可、認可、登録、届出等を必要とする業種にあっては、当該許可等を受けている(又は、受ける)こと。

(3)事業税その他租税の未申告・滞納や、社会保険料の滞納がないこと。ただし、完納の見通しが立つ場合などはこの限りではない。

(4)現在かつ将来にわたって、暴力団員等に該当しないこと、暴力団員等が経営を支配していると認められる関係等を有しないこと及び暴力的な要求行為等を行わないこと。

◆ 融資条件

東京都の制度融資(創業)の基本的な融資条件は以下の通りです。
利率が低く、保証料が3分の1までに抑えられる点が最大のメリットです。

利率と保証料を合わせても、公庫より安く借入コストを抑えることも多いです。

融資限度額 3,500万円
融資期間 運転資金:7年以内(据置期間1年以内)
設備資金:10年以内(据置期間1年以内)
融資利率(年率)
  • 融資期間3年以内:1.5%
  • 3年超5年以内:1.6%
  • 5年超7年以内:1.8%
  • 7年超:2.0%以内
    ※ 責任共有制度対象外の場合で固定金利を適用するとき
返済方法 分割返済(融資期間が1年以内の場合は一括返済も可)
融資形式 証書貸付または手形貸付
信用保証料 2/3を東京都が補助
保証人 法人代表者を除き原則不要
物的担保 原則不要

◆ 必要な提出書類

  • 信用保証委託申込書
  • 信用保証委託契約書
  • 個人情報の取り扱いに関する同意書
  • 印鑑証明書
  • 商業登記簿謄本
  • 確定申告書(決算書)の写し(原則直近2期分)
  • 納税が確認できる書類
  • 見積書等(設備資金の場合)
  • 創業計画添付書および創業計画書

◆ 政策金融公庫の融資との違い

東京都23区の方の創業融資の選択肢としては、以下の3択です。

  • 日本政策金融公庫の融資
  • 区の制度融資
  • 東京都の制度融資

創業者の方の多くは、公庫の融資をまず受ける場合が多いです。

一般的に、公庫の融資は入金までの時間も短いため、スピードを重視する場合、公庫がおすすめです。

一方、制度融資は公庫より手間や時間がかかるものの、公庫よりも調達コストが安く抑えられる場合が多いです。

◆ 東京都なら23区の制度融資が好条件

では、東京都で事業を行う方の場合、制度融資を利用する場合、東京都と区の制度どちらを使うのがよいでしょうか。

区の制度融資を活用した方が借入条件が良い場合が多い気がします。

正確には、それぞれの区ごとにある制度融資の条件を確認してください。

例えば私の事務所のある中野区では、創業者の利息負担が0.2%となる制度融資があります。
都の制度融資や公庫の融資と比べても非常に低金利です。

また、区の制度融資と都の制度融資を併用できることもあります。

利率は0.2%、保証料に関しては都の制度融資で1/3になるというように、都制度融資として信用保証協会へ保証申込みをすることで、良いとこ取りができるようなケースもあります。

◆ おわりに。

今回は、東京都の制度融資(創業)について紹介させて頂きました。

制度融資をうまく活用できれば、調達コストを低く抑えることができて、さらには地元の信用金庫・信用組合等の金融機関とのパイプを作ることができます。この機会に活用してみてください。

判断に迷ったり、ご不明点などがありましたらお問い合わせフォームからご気軽にご連絡ください。

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小規模事業者持続化補助金の採択率と留意点

小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が販路開拓の取組をする際に、その経費の一部を国が負担してくれ、それによって地域の雇用や産業を支える小規模事業者の生産性向上と
持続的発展を図ることを目的した補助金です。

今回は、この小規模事業者持続化補助金の採択率と補助金申請にあたっての留意点を解説していきます。

制度の内容と創業枠

この補助金の補助額は通常枠で50万円です。
特別枠の申請要件を満たせば上限200万円、さらに令和5年度はインボイス特例の上限上乗せがあるので、最大250万円となっています。

特別枠には、賃上げ枠、卒業枠等がありますが、創業者向けに「創業枠」が設けられており、最大200万円の補助上限と優遇されているため、申請をぜひ検討してみてください!

例えば、「ホームページを作ろうと思っている」「販促用のチラシを作ろう!」「新商品の試作品や包装パッケージの試作開発をしたい」などの計画がある創業者の方が対象になる可能性があります。

貰ったお金はもちろん返済不要ですが、所得税・法人税等の課税対象にはなりますので、ご留意ください。

採択率

直近の第11回の採択率は約59%でした。そのほか、過去の採択率の推移は以下の通りです。
(中小企業庁の公式サイトのデータを集計して筆者が計算)

申請者の数などにも左右されるため、その回によってバラつきがあるものの、約40%~70%で推移しています。

そうなんです。採択率は、非常に「微妙」なんです。

つまり、しっかりと準備して申請をすれば採択される可能性はあるが、準備が甘いと足元をすくわれて採択されなかったということもある制度なのです。

申請するまでの留意点

小規模事業者持続化補助金の申請にあたってすることは以下の5つです。

① 電子申請(Jグランツ)を利用するために、GビズIDの取得

郵送でも可能ですが、電子申請の圧倒的に楽ですので、電子申請の準備をしてください。

GビズIDの取得は2週間程度かかる場合もあるため、早めに申請することをお勧めします。無料でできます。

② 公募要領等の確認

必ず、公募要領等を読み込んでください。

あとから、要件を満たしていないことに気づいて、それまでの準備が水の泡なんてこともあります。

また、補助金申請は期限を過ぎた場合、どんな良い計画や事業であっても絶対に認められません。したがって、タイムスケジュールを確認して、計画的に準備していくためにも公募要領には目を通すのはマストです。

③ 補助対象経費と資金繰りの検討

そもそも、補助金の対象となる経費が発生することが、補助金の前提です。なので、ご自身の事業として、販促活動等に係る経費がどのように、どのくらい発生するのかを計画してみてください。経費として発生する必要がないものに対して、補助金を申請することはできません。

また、補助対象経費を支出するには資金が必要です。

「だから補助金を申請するんじゃないか!」と思われるかもしれませんが、補助金は支出した後に実績報告をし、認められたものが、補助金として後から入金されます。

つまり、キャッシュアウトが先行するため、その資金を用意する必要があります。

自己資金や融資で用意した資金をどのように使っていくのか、資金計画を立てる必要があります。

④ 申請書類や計画の作成

小規模事業者持続化補助金の申請書類には「経営計画書兼補助事業計画書①(様式2)」というものがあり、この書類作成が最も時間がかかるものになっています。

内容は、主にはご自身の事業内容や経営環境・強み/弱み等の定性的な内容から、事業計画等の定量的なものまで、記載することになります。

また、補助金の対象となる補助事業の内容やその効果等も記載してアピールする必要があります。

記載できる枚数が指定されており、端的に要領よくまとめていくのが難しいところです。

さらに、様式2以外にも必要な書類や資料が多岐にわたり、漏れなく準備する必要があります。

⑤ 商工会議所等での事前確認をしてもらう

小規模事業者持続化補助金は、商工会議所等の支援を受けながら取り組む事業という要件があるため、様式2・3を作成したら、それを商工会議所等に持参し、確認してもらう必要があります。

確認が終わると様式4「事業支援計画書」を入手することになり、その資料が申請資料の一部となっています。

留意していただきたいのが、この商工会議所等への事前確認の期限が、補助金申請期限より前になっていることです。補助金申請期限に間に合えばよいというものではなく、この商工会議所等にいつまで行かないといけないのかを十分に確認しておくことに気をつけてください。

上記を行った後に、期限内までに電子申請を行って、後は認可されるのを願って待つだけです!

ぜひ、小規模事業者持続化補助金の制度を利用して、創業に役立ててみてください!

創業時に、自己資金のみで開業すべきか?借入をすべきか?

創業希望の方や創業して間もない方からよく、

「創業融資を借りても、返済が不安だから自己資金だけで開業しようかと迷ってます」

というご相談を受けることがあります。

こんな時、「自己資金だけで」と希望する創業者の方に対して、けして無理強いするものではありませんが、もし、迷っているようでしたら、借りることをおすすめしています。

今回は、なぜ創業融資を借りた方がよいのかということについて、以下説明させていただきます。

結論: 借りたいときに貸してもらえないから

創業から1年もすると

「今はまだ赤字だけれどあと少し事業を継続できれば軌道に乗る」
とおっしゃる事業者は少なくありません。

しかし、その時になって急に融資を申し込んでも業績が悪化したままの企業に
融資してくれる金融機関はほとんどないのです。

創業のために準備していた資金(自己資金)や調達した資金(創業融資等)が1年以内に枯渇し、事業が継続できなくなった結果、廃業せざるを得ないということになります。

だから、創業融資は借りておいた方がよい。という結論になります。

具体的に説明していきます。

創業者の生存率

「創業者の3割は1年以内に廃業し、5割は3年以内に廃業する。10年後まで生き残っている創業者は1割程度」…という話を何度か聞いたことがあるでしょう。

私も、この話を聞くことはあっても、正直、この数値の根拠となるデータを見つけることができておりません。

実際のところは、ここまで廃業する可能性が高いとは思いませんが、遠くもないかと思います。日本政策公庫の「2022年度新規開業実態調査」(12ページ)によると、創業者の開業後の状況として、3.5割程度は赤字基調です。赤字基調だからといって、すぐには廃業しませんが、赤字基調であれば、そのままであれば資金不足に陥りますので、1年以内の廃業率3割というのは、あながち遠い数字ではないのです。

このような1年以内に廃業した創業者の多くは、「あと1年(半年という方もいます)粘ることができれば、事業を軌道に乗せられたのに」とこぼします。

大半の方が、計画通りではないながらも、売上は増加していっていたのです。ただ、その売上増加スピードが計画よりも遅かったため、資金繰りが苦しくなるわけです。

手応えは感じていたのに、資金繰りの問題を解消できなかったが故に廃業せざるを得なかったのは、非常に悔しいものです。

「あと1年粘ることができれば」と肩を落とす創業者が、資金繰りが悪化したとき追加の運転資金を借りることができれば、多くは生き残れるでしょう。

つまり「創業者の3割」といわれる1年以内の廃業は、準備次第で防げるのです。

日本政策金融公庫は創業1年後の追加融資を(そう簡単に)行わない

創業者の95%は、日本政策金融公庫の創業融資で創業資金を調達します。

すべてのケースそうではないですが、基本的に公庫は創業融資を行った事業者が1年後に「準備していた資金が枯渇したので、追加で運転資金をとお願いします」と言っても、ほぼ貸してくれません。

なぜならば、基本的に公庫には、「創業融資の借入額の半分程度を返済してもらわなければ、次の融資は取り扱わない」という暗黙のルールがあるからです。

もちろん、業績が順調で前向きの追加資金を希望する事業者には、半分返済が終わっていなくても追加融資に応じてくれます。

しかし、創業計画のとおりには進んでおらず、業績が悪化している事業者には、原則的に追加融資を行いません。

基本的に創業融資の場合、「設備資金」は7年返済、「運転資金」は5年返済が多いです。

据置期間なしで借りてすぐ返済を始めても、半分を返済できるのは、「設備資金」は3年半、「運転資金」は2年半です。

1年以内に追加資金を借りようとしても、公庫は「半分返済していただいてから検討させてください」と、ほとんどの場合、断ってきます。

すると、創業1年後に赤字基調で、かつ創業資金を使い果たしそうになるものの、公庫から追加融資してもらえないという状況になります。これを「創業1年後の資金繰りの沼」と呼んでいます。

公庫と同時に民間金融機関からも借りる

では、「創業1年後の資金繰りの沼」にハマらないためには、どうすればよいか?

それは、資金繰りが最大ピンチになる1~2年後を見越して「民間金融機関からも創業融資を借り、関係性を深め、支援してもらえる態勢の構築」をすることです。

公庫の創業融資を借りるとき、同時に民間金融機関からも創業融資をしてもらうためは、下記のような方法があります。

  • 公庫に提携融資先を紹介してもらう
  • 公庫が創業融資を認可するのを条件に、民間金融機関に創業融資を申請
  • 公庫から創業融資を借りられたことを材料に、民間金融機関に融資を申し込む
  • 公庫と民間金融機関の創業融資を並行して、同時に申し込む

創業融資のデメリットは何か?

逆に創業融資を行うことでのデメリットはなんでしょうか。以下のことが考えられます。

利息負担が必要

創業融資を借りなければ、発生しなかった利息という追加的なコストが発生してしまうというデメリットがあります。

しかし、上記の創業融資のメリットを享受するための、必要経費として考えていただきたいです。

創業融資を例えば、500万円借りた場合、日本政策金融公庫の創業融資は、だいたい利率1%~3%に収まりますので(ブログ執筆時点)、最大で15万円/年間となります。

これは税務上、事業経費にもなりますし、これを高いと捉えるか安いと捉えるかは、その方の判断によると思いますが、私は事業を行う上で、必要な経費として捉えた方がよいと考えています。

なお、日本政策金融公庫の金利は利用する融資制度や担保の有無、資金使途、返済期間などによっても変わる可能性がありますので、実際の金利がどのくらいになるのかは、日本政策金融公庫の支店窓口に問い合わせてみてください。

元金返済が必要

当然ですが、あくまでも融資なので、利息をつけて満額返す必要があります。

融資は借りた後、「どう使うのか」と「どう返すのか」が重要になってきます。損益の計画や資金繰りの計画を立てながら、返済することが必要になってきます。

事業計画書作成など手間がかかる

創業融資を借りる場合には、創業計画書や事業計画書の作成が必要です。
借入額が少なくて、かつ自己資金が潤沢にある場合などは創業計画でも借りられる場合がありますが、そうでなければ事業計画書を作成することが望ましいです。

事業計画は、経営者の略歴から事業内容や、損益の計画と資金繰りの計画が必要になり、作成するのは簡単ではありません。専門家に頼む場合は、コストが発生してしまうので、その意味ではデメリットとなります。

しかし、事業計画等を作成すること自体に価値があります。事業の成功率が計画があるのとないのでは、大きく違うからです。その点も含めて、デメリットとして考えるか、将来の事業計画を作成・検討する良い機会と捉えるのか、考えてみてください。

経営者保証等が必要なケースがある

場合によっては、融資を受ける際に担保や保証人などの保全が必要になるケースもあります。しかし、創業融資では制度上、無保証で借りられることも多いです。また、昨今は経営者保証なしの融資による創業支援を金融庁や経済産業省主導で推し進めています。

まとめ

最初に申し上げた通り、絶対、創業融資は借りないといけないものではありませんし、事業の性質や創業者のおかれた環境によっては、借りなくても良いケースはあるでしょう。

しかし、創業時には政策的に有利な制度があり、その制度を使えるのは、その方の創業時に限定されています。そのため、迷っているようでしたら、借りることをおすすめしています

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