事業に関するご相談だけではなく、不動産に関するご相談もお受けすることがあります。経営者の方から「個人財産で不動産投資をしたいのだけど、どうでしょうか?銀行は融資してくれますか?」といったようなご相談です。
事業融資の場合と不動産向け融資の場合は、金融機関の融資のポイントが異なります。今回は、金融機関がどのようなポイントで不動産融資審査をしてるのかを解説していきたいと思います。これらのポイントを押さえていけば、どのような準備資料を作っておけばいいのかがわかるわけです。
個人向けの不動産融資の種類と注意点
個人の方が行う不動産融資案件の種類とその時の留意点は以下の通りです。
- アパート・マンションへの融資
資産運用の一環として、賃料収入を得るためにアパートやマンションを購入し、賃貸物件として運用するケースです。この場合、必要資金の7割程度しか融資してくれることがないと知っていてください。通常、自己資金が3割必要です。借主の資産内容や取引内容によって前後はしますが、必要資金を 100%融資してもらうことはあり得ません。 - サブリースのアパートやマンションへの融資
サブリース会社がオーナーから賃貸物件を一括して借り上げて、1戸単位で転貸するシステムです。物件の管理や手続き、賃料の回収業務についてはサブリース会社が行い、オーナーには契約内容に応じた家賃が支払われます。 メリットとしては、オーナーが入居退去の手続きや 家賃の集金業務から解放され所有物件の管理業務から解放され、また契約期間中は 一定の家賃がサブリース会社から安定した収入が入ってくるというメリットはあります。
しかし、注意点としては、家賃が入ってくるのは一定の契約期間だけということです。サブリースの契約期間は通常は、20年とか35年とかですが、「10年ごとに見直し」等となっており、物件周辺の状況や空室状況などにより、家賃が下がってくるというリスクはあります。サブリース会社が提示した金額がずっと続くわけではありません。
また、通常、この取引においては、不動産会社(サブリース会社)と交渉することが多いため、金融機関が不動産会社から聞いてることと、お客さんが不動産会社から聞いてることが相違することを避けるために、直接金融機関と会う場所をセッティングすることも大事です。 - 駐車場など事業用物件
個人の方が 駐車場経営などを行うために事業用物件を取得することがあります 。この場合には土地購入資金や駐車場にするための整備費用などの資金需要が発生することになります。ただ、駐車場用地を買う場合は将来的には別の土地活用を目的にしてるケースもあります。この時は、将来こういう風に土地を活用する予定があるんですよということを金融機関に伝えておくと、金融機関は積極的に土地購入資金に取り組んでくれることがあります。
また、金融機関は駐車場等の事業用物件の融資の場合は、将来の収支状況を特に気にします。駐車場経営からの収入が不安定ではないか、固定資産税等の支払いを考慮されているか、土地購入後の機械設備の資金なども考慮しているか。また、いざという時のための回収に備えて担保評価額は気にするポイントです。
金融機関の選びのポイント
金融機関としても、企業向けの融資残高が伸び悩む中で長期にわたり、安定した収益が確保できる不動産融資は重要であるということは間違いないです。先日の週刊ダイヤモンド3月4日号には信用金庫・信用組合ランキングが載っており、非常に参考になります。この中でもランキング上位の金融機関は不動産融資を積極的に行っており、参考にしていただけると良いです。
金融機関の不動産融資のポイント
どのようなポイントで審査をしてるのかを解説していきたいと思います。これらのポイントを押さえて、融資資料の作成や心構えをもっておくとよいでしょう。
1. 顧客属性・信用情報
不動産融資でも、顧客属性や信用情報は審査基準の1つになります。確認するのは申込者の年齢や職業、就業形態、年収、勤務地先の情報等です。
年齢に関しては高齢の場合、返済できる期間が短くなってしまうため、不動産融資を受ける場合はハードルが高くなります。また、就業形態も重要で、別の事業や勤め先があるならば継続的・安定的に収入が確保できるかどうかを確認します。年収については、昨今は不正事例もあったため、通帳の原本を確認されるようになっています。加えて、信用情報照会を行い、他社からの借入がある場合は、過去の返済履歴、延滞の有無が判断材料になります。
2.投資物件の資産価値・担保価値
購入資金を融資する金融機関としては、万が一、融資の返済が滞った場合には、担保として土地建物不動産の価格がいくらなのかは知っておく必要があります。この際、担保価値が高ければ融資の可能性も高くなります。資産価値として、金融機関へアピールすべき点は以下この4点になります。
- 交通の利便性が良好であるか
- 生活する上で利便性が高いか
- 災害に強い場所に位置するか
- 構造に問題はないか。耐震性、耐火性、遮音性等に優れているか
3.購入予定者の事業経営能力
不動産投資を行う個人も、不動産賃貸業を行う事業者となるわけなので、事業者として人間性も重要な審査基準となっていきます。そのため、キチンと以下の質問には応えられるようにしておく必要があります。
- どのような目的で不動産投資を行うのか不動産投資で何を実現したいのか
- 大規模投資等をきちんと見据えているか
- 何より不動産賃貸業者となる覚悟はできているか