公庫からの創業融資から3年以内の追加融資は難しい!? ~ 民間金融機関との信頼関係の作り方~

先日、こんなご相談がありました。

「1年前に公庫で創業融資を借りた。その後、初期投資等が想定よりかかったため、計画よりキャッシュアウトが多く、資金が十分ではなくなってきた。ここで追加融資が借りられれば、事業に集中することができて、軌道に乗せられそう。しかし、公庫からは追加融資の依頼を謝絶されてしまった。どうしたらよいか?」

一般的には創業時に借りた公庫に、創業融資の次の融資もお願いするでしょう。

しかし、公庫には「暗黙の了解」があり、断れてしまうことがあります。

それは、創業融資を借りて3年も経っていない事業者に対して、一部の例外を除き、公庫は追加で貸さないというものです。

なぜ日本政策金融公庫は、創業融資の「次」の追加融資に渋いのでしょうか。それに備えてどんなことをすればよいでしょうか?今回はこのテーマを考えていきたいと思います。

1.公庫が創業融資後の追加融資に応じない理由

日本政策金融公庫が、創業融資後の追加融資に前向きに応じてくれない理由は、こんな暗黙の了解があるからです。

「半分以上返済が進まなければ追加の融資をしない

公庫での創業融資は資金使途別に返済は以下の期間であることが多いです。

  • 運転資金:5年
  • 設備資金:7年

半分以上返済がおわるタイミングは、据置期間を設定しなかった場合、運転資金で2年半、設備資金で3年半です。

この間に公庫融資を申し込んでも、「半分返済が終わっていないと、新規融資は難しいです」と、門前払いされる可能性が高いです。

2.なぜそんな「暗黙の了解」があるのか?

創業セミナー等で聞くこととして以下の話があります。

創業者の3割は1年以内に廃業し、5割は3年以内に廃業する。10年後に残る企業は1割」

実際は、このデータの根拠を私はまだ見たことなく、ここまで廃業リスクは高くはないとは、肌感覚として思いますが、会社設立の経緯も様々ありますので、遠くはないのかもしれません。

創業時の融資判断の材料としては、以下の3つです。

  1. 自己資金
  2. 経験年数
  3. 創業計画書の内容

しかし、創業後6ヶ月を超えると、「実績」を重視していきます。その事業としての結果が見えてきているのですから当然です。

事業計画通りの収益確保ができず、資金繰りが悪化している事業者は、融資判断材料として決算書等による形式審査で「追加融資はできません」と断られることになってしまうのです。

3.例外的に公庫が追加融資に応じる場合

ただし、すべての企業が追加融資を断られるわけではありません。例外はあります。

公庫が創業後の追加融資に応じやすいのは、以下のような事業者です。

  • 業績が計画を超過しており、売上増加傾向
  • 更なる売上増加のために必要な「運転資本」の増強や「設備資金」等の投資が必要

売上や収益が計画よりも上回り、今後も伸びていく可能性が高ければ、公庫は低リスクと判断して融資に前向きに取り組んでくれます。

4.公庫に断られた後、民間金融機関でも貸してくれない

公庫に断られると、次に行くのは民間金融機関です。
しかし、それまでつきあいのなかった近所の金融機関に出向いて急に融資を依頼しても、まず断られます。
今までまったく取引がない事業者は、金融機関にとって「まったく情報のない相手」であり、リスクが高いと考えるからです。

民間金融機関の中には、事業性融資に積極的な金融機関もいて、そのような金融機関は以下のような情報を求めています。

●業種・規模など事業内容
●ビジネスモデルの安定性・将来性・社会性
●売上などの収支推移、財務状況
●経営者の事業への考え方や性格 など

しかし、このような情報がない起業が「資金繰りが苦しく運転資金を貸してほしい」と依頼しても、金融機関は「創業した事業がうまくいっていない企業」として融資リスクの高い事業と見なします。

そんなリスクの高い、今まで知らなかった企業に貸さなければならない理由はなく、融資に応じてもらうのは難しいでしょう。

5.民間銀行から貸してもらえる/もらえない企業の違い

では、創業3年以内/低業績の企業が新規融資を得られないのかというと、そんなことはありません。

たしかに公庫なら、少なくとも半分を返済しないと追加融資には応じませんが、民間金融機関の場合、融資してもらえるように状況を変えることは可能です。

縁もゆかりもない中小企業がいきなり「融資してほしい」金融機関に行っても断られますが、縁もゆかりもある中小企業なら、積極的に対処してもらえるのです。

6.民間金融機関との信頼関係の作り方

たとえば、同じような2つの中小企業A、Bを想像してみましょう。

  • A社・B社は、ともに創業3年目・経常赤字
  • A社は、C信用金庫との取引なし
  • B社は創業時に公庫と同時にC信用金庫からも創業融資あり。月に1度、担当者の訪問あり

銀行の担当者はB社の事業内容・業況をよく把握しているので、これら2つの中小企業がほぼ同時にC信用金庫に融資を申し込んだ場合、財務内容がほとんど変わらなくてもA社は融資を断られ、B社の案件は前向きに取り組んでもらいやすいのです。

なぜ、このように結果に差が出るのでしょうか?

それは、金融機関にとって融資審査時の判断材料の差です。

A社の融資審査を行うための判断材料は「財務内容(決算書・試算表)」しかありません。

それに対し、B社なら上記に加え、以下のような情報があります。

  • 理念、ビジョン、細かな事業内容
  • 事業計画、予算
  • 予算実績対比、進捗状況
  • 信用金庫に対する寄与度
  • 今後の事業の見込み/将来性/社会的な活動
  • 経営者の考え方・性格

このような多くの情報があると信頼度が高まります。信頼度が高ければ、金融機関はその企業を何とか助けようと努力してくれます。一方、これまでつきあいのなかったA社を助ける「義理」も「義務」も、C信用金庫にはありません。

財務内容だけみて、あえてブラックボックスの中に手を突っ込むような真似は金融機関はしません。

7.まとめ「銀行からの信用は日ごろのコミュニケーションから」

事業者の業績が悪化し資金繰りが厳しくなれば、たいてい日本政策金融公庫に追加融資を申し込みます。しかし前に借りたのが2年以内だったり(直近の融資からまだ2年しか経っていない)、融資枠いっぱいまで借りたりしている場合は、公庫は追加融資には応じません。

その時点で今まで取引のなかった民間金融機関を頼っても、期待する対応は得られないでしょう。一方、懇意にしている民間金融機関を確保していれば、何とか融資しようと努力してくれます。

民間金融機関から融資してもらえる事業者になるには、その金融機関との良好な関係を構築し、普段からコミュニケーションをとっておくことが重要です。

 

 

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