2023年10月以降の中小企業向けの経営改善支援策

2023年8月30日、経済産業省は中小企業の持続的な成長を後押しするため、「挑戦する中小企業応援パッケージ」を公表しました。金融庁や財務省との協力のもと策定されたこのパッケージは、コロナ禍における資金繰り支援と、チャレンジ精神あふれる中小企業の経営改善及び再生を目的とした施策を含んでいます。前回のブログで触れた2023年10月以降のコロナ関連融資の取り扱いに続き、今回は経営改善と経営者保証に関する支援策を詳しく解説します。

この支援パッケージは、経営改善フェーズにおける支援策として以下の3点を挙げています:

  1. 信用保証協会による経営改善支援の強化: 監督指針の改正を通して民間金融機関との連携を強化する計画ですが、現時点での具体的な改正点は公表されていません。
  2. 民間金融機関による経営改善支援の促進: 事業者はリスケジュールの際に「経営改善計画書」の提出が求められ、その作成には以下の補助金が利用可能です:
    • 「早期経営改善計画策定支援事業」による補助金:簡易な経営改善計画の策定にかかる費用の2/3を補助し、上限は15万円です。
    • 「経営改善計画策定支援事業」による補助金:本格的なリスケジュールが必要な大規模事業者のための経営改善計画策定費用の2/3を補助し、上限は200万円です。
  3. 経営者保証改革の促進:
    • 現行の「経営者保証ガイドラインの3要件」を満たす事業者のみが経営者保証の免除対象となっていますが、2024年からは要件を満たさない事業者でも保証料を上乗せすることで免除が可能になる予定です。
    • 金融機関による経営者保証徴求手続きの監督を強化し、「経営者保証改革プログラム」の実行と事業成長担保権の創設を進めます。

さらに、このパッケージは以下のような体制整備も含んでいます:

  • 経営改善・再生支援を一丸となって進めるための「挑戦する中小企業の経営改善・再生支援強化会議」(仮称)の設置。
  • 官民金融機関が行う経営改善・再生支援の取り組み状況を細かくフォローアップする体制の構築。

特に、「早期経営改営計画策定支援事業」の補助金は、中小企業や小規模事業者が利用しやすく、経営改善計画の策定を通じて融資の受け入れが容易になると期待されています。経営改善のための事業計画を策定しないと、今後は融資を受けづらくなります。この補助金を利用することで、これからハードルが上がる融資をスムーズに引き出せるようになるでしょう

2023年10月以降の中小企業向けコロナ融資:経済産業省の最新支援策の詳細

2023年8月30日、経済産業省は「挑戦する中小企業応援パッケージ」という新しいプランを発表しました。このプランは、中小企業が今後の成長を続けることができるようにサポートすることを目的としています。このプランには、主に2つの大きなポイントが挙げられます。

1つ目は「将来の挑戦に向けたコロナ資金繰り支援」という名前のもと、特にコロナの影響を受けて資金繰りに困っている中小企業をサポートする内容が盛り込まれています。

2つ目は「挑戦する中小企業の経営改善・再生支援の強化」という項目。これは、新しい事業やイノベーションに挑戦する中小企業の経営を更に強化し、必要な場合は再生をサポートするための措置を含んでいます。

これらのサポートを通じて、経済産業省は中小企業の安定的な成長を後押しし、日本経済全体の健全な発展を目指しています。

今回は、この2つ目のポイントである「将来の挑戦に向けたコロナ資金繰り支援」の内容を解説していきたいと思います。

1.「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は2024年3月末までの延長が決定

元々2023年9月末が終了予定でしたが、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は2024年3月末までの延長が確定しました。その期間内、「同額借換」の延長手続きが可能ですが、金利は若干の上昇が見られます。

具体的には、2023年9月末までは「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の金利は「基準利率-0.9%」でしたが、2023年10月以降は「基準利率-0.5%」と、金利が0.4%増となります。

2.「セーフティネット4号」の新規融資は2023年9月末で終了

コロナに関連する融資の中で、「セーフティネット4号(100%保証)」の新規融資は2023年9月末に終了しました。ただし、2023年12月末までは既存の「同額借換」や「増額借換」は継続されます。2024年3月末までの延長についてのお知らせは、2023年12月初旬頃に発表される予定です。

3.「セーフティネット貸付」の金利引下げは2024年3月末まで続く

現在、「原油価格上昇をはじめとした原材料・エネルギーコスト増の影響」「ウクライナ情勢の変化の影響」「物価高騰の影響」を受け、利益率が減少している事業者は、「セーフティネット貸付」の利用を検討できます。

2023年9月末まで基準金利より0.4%~0.7%引き下げられていましたが、この措置が2024年3月末まで続くこととなりました。

4.「コロナ資本性劣後ローン」は2024年3月末まで延長、上限額も引き上げ

「コロナ資本性劣後ローン」は、最大貸出額が15億円へと増額され、2024年3月末までの延長が決まりました。

 

返済を繰り延べる「同額借換」は2024年3月末が期限となる見込みです。この手続きを希望する事業者は、早めの行動を推奨します。

 

インボイス制度に対応した会計ソフトの影響 ~勘定奉行クラウド編②

いよいよ10月1日からインボイス制度が開始されました。

今回も前回に引き続き、インボイス制度への対応で会計ソフトにどんな影響があるかを勘定奉行クラウドを中心にまとめていきたいと思います。

インボイス制度下では、インボイス発行事業者ではない事業者への支払いは、仕入税額控除の対象外になります。一方で、経過措置により令和5年10月1日から令和8年9月30日までに行ったものは仕入税額相当額の80%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までに行ったものは仕入税額相当額の50%を仕入税額控除の対象とすることができます(平成28年改正法附則52、53)。

このようにインボイス発行事業者でない事業者への支払い(ここでは、免税事業者と呼びます)に係る仕訳の起票方法はどうなるのでしょうか。

以下の勘定奉行クラウドの説明動画に沿って、補足しながら解説していきます!

1.仕入税額控除できない消費税を本体価格に含める運用

免税事業者から購入した費用について、仕入税額控除できない消費税額の処理方法は以下の2つがあります。

① 本体価格に上乗せする
② 決算整理仕訳等で雑損失へ振り替える

勘定奉行クラウドでは、免税事業者から購入した費用について、仕入税額控除できない消費税額を自動で計算し、本体価格の上乗せして仕訳起票される設定が推奨されています。

本体価格に上乗せしない処理をする場合は設定を変更する必要があります。

ここで注意点としては、勘定科目メニューにおいて、控除できない金額を本体価格に含めるためには「税込金額から計算する」という設定になっている必要があります。

2.公共機関特例等の適用の場合の運用方法

3万円未満の公共交通機関による旅客の運送に関して、インボイスの保存は不要で、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合があります。

この特例を適用する場合、帳簿へ以下の事項を追加記載する必要があります。

・公共機関特例や入場券等回収特例:帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる仕入に該当する旨(例:「3万円未満の鉄道料」、「入場券等」)

・3万円未満の自動販売機等からの商品の購入等:仕入れの相手方の住所又は所在地 「〇〇市 自販機」、「××銀行□□支店ATM」

勘定奉行クラウドで、この帳簿の記載事項に対応するためには、運用上、以下の2つの方法が考えられます。

① 補助科目で対応

補助科目に、「3万円未満公共機関利用」などを追加して利用する場合です。

他に補助科目を使っていない科目等であればこの対応でも可能です。

② 摘要欄に記載する

補助科目の対応だと、既存の補助科目にも該当して、かつ、インボイス制度対応の補助科目に該当する場合、運用上、どっちの補助科目を割り当てればよいか迷う場合あります。

その場合は、摘要欄に記載することで対応が可能です。

また、摘要欄で対応する方法を採用した場合、帳簿の記載事項の入力漏れに対応する方法として、「仕訳伝票チェック」機能を利用することができます。

摘要に入力し忘れた場合などにはこの方法により、自動チェック&一括修正が可能です。

3.入金時の支払い手数料の関する仕訳

自社で売掛金の入金時などの振込手数料を負担しているケースについて、その振込手数料を支払手数料で計上し、税区分を「課税売上の返還等」(または課税売上のマイナス)として処理することが推奨されます。

なぜならば、原則、この振込手数料に関してインボイスを入手することが困難・非効率であるためです。

売上げに係る対価の返還等に係る税込金額が1万円未満である場合には、当該対価返還等に関し適格返還請求書を交付する義務が免除されています。

したがって、従来通り、科目は支払手数料としつつ、税区分を「課税売上の返還等」(または課税売上のマイナス)へ変更することで対応することになります。

勘定奉行クラウドでは、補助科目で例えば「自社負担振込手数料」等の科目を新設し、科目設定で、デフォルトの税区分を「課税売上の返還等」(または課税売上10%)にしておくことでミスが生じにくくなります。

以上

インボイス制度に対応した会計ソフトの影響 ~勘定奉行クラウド編①

いよいよ10月1日からインボイス制度が開始されました。

そこで、今一度、インボイス制度への対応で会計ソフトにどんな影響があるかをまとめていきたいと思います。

今回は、勘定奉行クラウドを中心にまとめていきます。

インボイス制度下では、インボイス発行事業者ではない事業者への支払いは、仕入税額控除の対象外になります。一方で、経過措置により令和5年10月1日から令和8年9月30日までに行ったものは仕入税額相当額の80%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までに行ったものは仕入税額相当額の50%を仕入税額控除の対象とすることができます(平成28年改正法附則52、53)

このようにインボイス発行事業者でない事業者への支払い(ここでは、免税事業者と呼びます)に係る仕訳はどのように変わるのでしょうか?

以下の勘定奉行クラウドの説明動画に沿って、補足しながら解説していきます!

税区分の追加

これが最も大事なポイントです。

インボイス制度では、免税事業者との取引は、課税事業者の取引と区分して処理しなければならないということでした。

勘定奉行クラウドでは、免税事業者との取引かどうかは仕訳伝票上の税区分で最終的に判断するという方法をとっています。

会計ソフトによって対応方法は異なりますので、詳細は以下の過去ブログをご参照ください。

インボイス制度に対応した会計ソフトの影響 ~マネーフォワード会計編① 非適格事業者への経費等~

したがって、税区分で免税事業者との取引用のものが以下の通り、追加されました。

そのため、仕訳起票のつど、免税事業者との取引は税区分を変更して起票する必要があります。

この税区分の切り替え方法は、全部で3つあります。

1) 取引先マスタを指定

2) 補助科目を指定

3)仕訳伝票起票時に直接税区分を指定

これらいずれの方法で起票すればよいのか?という点について、

結論を申し上げますと、取引パターンに応じて変更するということになります。

その理由は後ほど、説明します。

まずは、それぞれの切り替え方法をご説明します。

1)取引先マスタを指定する

勘定奉行クラウド利用の約70%の事業者が取引先マスタ上で登録して管理する予定のようです。

現在、勘定奉行クラウドでは、取引先ごとに免税事業者と課税事業者を以下のように、マスター設定することができます。

取引先マスタで、適格請求書登録番号を入力しておけば、以下のように国税庁のサイトと自動照合して、課税事業者か免税事業者かどうかを正しく登録することができます。

その後の起票時に取引先マスタを指定することで、正しく税区分を起票することができるというメリットがあります。

また、取引マスタを指定することで、取引先ごとの債権や債務残高管理、取引量の管理といったこともできるというのは、(本来の目的で)有用です。

 

この取引先マスタの適格登録番号の登録方法には以下の3つがあります。

① 取引先をマスタに新規登録して登録時に個別チェック

取引先名を請求書を見ながらインボイス番号を事前に登録していくことができます。

その時、登録した時に国税庁のサイトに登録されていないければ「登録されていません」と出ますし、入力間違いの場合は、「登録番号を正しく入力されていません」とアラートが出てきます。

② 登録済みの取引先を一括でチェック

適格請求書発行事業者がその後、取消、失効となる場合等もありえます。

更新情報などを反映するためにワンクリックで登録番号が登録されているかどうかを確認することができます。

③ AI‐OCRでチェック

AI-OCRオプションに加入している場合は、利用した請求書をファイルのPDFファイルをアップロードすることができます。

この方法によれば、電子帳簿保存方法にも対応することができます。

自動的に請求書の内容を読み取って、登録番号を取引先マスタに登録してくれますので、ぜひとも利用したい機能です。

2) 補助科目を指定する

以下のように、補助科目で免税事業者かどうかを受けることができます。

補助科目設定で、税区分を紐づけておくことで、補助科目を指定することで正しい税区分を選択することができるようになります。

3) 仕訳伝票起票時に直接税区分を指定

これは、手修正で起票時に税区分を直接指定する方法です。

上記、1)2)の方法が使えない場合に使う方法ですが、手修正になるのでミスも生じる可能性高まりますし、作業量が多くなります。

4) どの方法によって税区分を選択するのがよいか?

なるべく、3)仕訳伝票起票時に直接税区分を指定する方法は、効率性の観点から避けたいところです。

そのため、原則、取引マスタで登録しましょう。

なぜなら、取引先があとから「取消」、「失効」になった場合などで免税事業者になった場合のチェック・税区分の一括変更が可能だからです。

しかし、交際費や個人タクシーなどの経費で、同じ取引先を頻繁に使わない、単発で生じた取引といったケースもあるでしょう。

しがって、取引パターンに応じて組み合わせるのが良いと思います。

  • 免税事業者との取引が継続して発生する科目:仕入など・・1)取引先マスタで指定
  • 単発の取引でかつ、免税事業者との取引が生じる場合がある科目:2)補助科目で指定
  • 単発の取引でかつ、免税事業者との取引が生じることは想定されない科目:3)直接指定

 

次回は、勘定奉行クラウドのその他のインボイス対応機能についてです。

 

これで安心!インボイス制度の総点検チェックポイント② 請求書受領側

インボイス制度が10月1日から開始ということで、いよいよ適用開始が迫っています。

インボイス制度開始直前のこの時期に、準備が行き届いているか総ざらいするためのチェックポイントをまとめました。

もし、まだ準備ができていない、足りていないところがあるのでは?と不安な事業者の方は確認してみてください!

今回は請求書を受領する側、つまり買い手の準備について確認していきます。
※ 課税事業者の方を想定しているため、免税事業者が適格請求書発行事業者になる場合の特例等は割愛しています。

チェックポイントと関連するFAQ(令和5年4月改定版)の番号を載せていますので、合わせてそちらもご確認ください。

1.請求書に関する現状把握

消費税の課税対象となる仕入取引・経費支払いについて、すべて請求書や領収書の受領があるかどうかを確認してください。

もし、契約書等のみで、都度都度、請求書等の受領がない取引があれば、インボイス制度後は適格請求書の受領するようにするか、もしくはそれ以外の対応でインボイス制度に対応する必要があります。

これは、値引きや返品についても同様ですので、そのような取引についても請求書等が受領されているか確認して、未受領の取引があるなら対応をするようにしましょう。

加えて、個人事業主等の免税事業者からの仕入・経費取引はインボイス制度後も発生する予定があるか検討してください。

これは、継続的に発生するもの、単発的に発生するものに分けて整理するとよいでしょう。

継続的に、発生するものとして例えば、

・個人不動産オーナーからのオフィスや賃貸物件の賃借取引

・デザイナーや記事制作に係る個人外注先

・販売代行等の個人事業者と取引

 

単発的に発生するものとして例えば

・個人タクシー

・飲食(免税事業者)

など、があります。

このような免税事業者等との取引については、インボイス制度開始後は課税仕入を取ることができません。

ただし、一定期間は経過措置があり、以下の一定割合を控除することができます。

帳簿の記載事項などは次回、詳細を解説します。

2.請求書受領時の対応

受け取った請求書や領収書がインボイスの要件を満たしているか、どのように・どのくらいの頻度で、誰が確認するのか、業務フローの検討ができているか確認してください。

特に適格請求書登録番号については、例えば、会計システム等の支払先マスタに取引相手の適格請求書発行番号を事前に登録しておき、起票時の都度都度の確認は省略するという方法もあり得ます。

国税庁の適格請求書登録番号の検索システムはAPIを公開していますので、Web-API連携を行い照合することも可能です。

加えて、家賃収入等で毎月の請求書は受領していない取引の場合については、契約書等で代用することも可能です。しかし、契約書等にインボイス制度で求められている項目が記載されているか確認することが必要になりますので、その点留意が必要になります。

 

また、受領した適格請求書は保存する必要があります。その保存方法についても忘れず検討してください。

もし、電子的な方法で受領した請求書の場合は、電子帳簿保存法の要件を満たした保存方法になっているか確認するようにしましょう。

以上、発行側のチェックポイントについてでした。次回は受領側の対応のチェックポイントについて、まとめていきたいと思います。

これで安心!インボイス制度の総点検チェックポイント① 請求書発行側

インボイス制度が10月1日から開始ということで、いよいよ適用開始が迫っています。

今回は、インボイス制度開始直前のこの時期に、準備が行き届いているか総ざらいするためのチェックポイントをまとめました。

もし、まだ準備ができていない、足りていないところがあるのでは?と不安な事業者の方は確認してみてください!

今回は請求書を発行する側、つまり売手の準備について確認していきます。
※ 課税事業者の方を想定しているため、免税事業者が適格請求書発行事業者になる場合の特例等は割愛しています。

チェックポイントと関連するFAQ(令和5年4月改定版)の番号を載せていますので、合わせてそちらもご確認ください。

1.適格請求書発行事業者の登録

適格請求書発行事業者の登録申請書は、原則2023年3月31日までに提出する必要がありました。まだ、適格請求書発行事業者になる予定の方で未提出でしたら、速やかに登録申請書を提出してください。

2023年10月1日から登録を受けようとする場合は、9月 30 日までに納税地を所轄する税務署長に登録申請書を提出すれば間に合います。

なお、2023年8月末時点で、登録事業者の件数は約350万件で、申請書の提出済みの件数が388万件です。

登録通知時期の目安は、e-Tax提出の場合は提出から 約1か月、書面提出の場合は提出から 約2か月となっているようです。

もし、登録通知が10月1日までに届かなかった場合の対応はFAQにありますので、そちらをご確認ください。

また、自社の登録番号の通知を受領したら、取引先にも伝達するようにしてください。取引先側でも、仕入側の登録番号を管理することが必要になってくるためです。

2.請求書に係る現状把握

消費税の課税対象となる売上取引について、すべて請求書の発行があるかどうかを確認してください。もし、契約書等のみで、都度都度の売上について、請求書の発行がない取引があれば、インボイス制度後は適格請求書の発行を行うようにするか、もしくはそれ以外の対応でインボイス制度に対応する必要があります。

これは値引きや返品についても同様ですので、そのような取引についても請求書等が発行されているか確認して、未発行であるなら対応をするようにしましょう。

次に、請求書が発行されている場合でも、それが適格請求書の要件を満たしているか確認してください。

適格請求書の記載事項は以下になります。

適格簡易請求書の場合は、主に⑥の書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称が省略可能という違いがあります。

もし、要件を満たしていない場合は、適格請求書が発行可能な外部サービスの利用やシステムの改修などの対応を検討することになります。

発行した適格請求書は保存する必要があります。その保存方法についても忘れず検討してください。

もし、電子的な方法で発行した請求書の場合は、電子帳簿保存法の要件を満たした保存方法になっているか確認するようにしましょう。

なお、中には例えば、家賃収入等で毎月の請求書は発行しないケースもあるかもしれません。

その場合でも必ず、請求書の発行が必要というわけではなく、契約書等で代用することも可能です。しかし、契約書等にインボイス制度で求められている項目が記載されているか確認することが必要になります。

以上、発行側のチェックポイントについてでした。次回は受領側の対応のチェックポイントについて、まとめていきたいと思います。

インボイス制度に対応した会計ソフトの影響 ~マネーフォワード会計編① 非適格事業者への経費等~

インボイス制度への対応で会計ソフトにどんな影響があるかをまとめていきたいと思います。

今回は、マネーフォワード会計を中心にまとめていきます。

インボイス制度が開始されると、インボイス発行事業者ではない事業者への支払いは、仕入税額控除の対象外になります。一方で、経過措置により令和5年10月1日から令和8年9月30日までに行ったものは仕入税額相当額の80%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までに行ったものは仕入税額相当額の50%を仕入税額控除の対象とすることができます(平成28年改正法附則52、53)

このようにインボイス発行事業者でない事業者への支払い(ここでは、免税事業者と呼びます)に係る仕訳はどのように変わるのでしょうか?

1.インボイス制度導入後の免税事業者に経費を支出した場合(経過措置が終わった後)

国税庁 令和3年改正消費税経理通達関係Q&A 問7によると、

問7 当社(9月決算法人、小売業)は、全社員の慰安のため、インボイス制度導入後である令和12年9月1日に免税事業者が営む国内の店舗において飲食を行い、その対価として11万円を支払いました。当社は税抜経理方式で経理しており、本件取引について支払対価の額の110分の10相当額を仮払消費税等の額として経理し、決算時に雑損失として計上しました。この場合の課税仕入れに係る法人税の取扱いはどうなりますか
〔支出時〕
(借方) 福利厚生費 100,000円 (貸方) 現金 110,000円
仮払消費税等 10,000円
〔決算時〕
(借方) 雑損失 10,000円 (貸方) 仮払消費税等 10,000円

 

回答:申告調整は不要です。

解説:インボイス制度導入後(令和11年10月1日以降)は、税務上は適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れについて仮払消費税等の額はないこととなるため、仮に法人の会計において仮払消費税等の額として経理した金額がある場合には、その金額を取引の対価の額に算入して法人税の所得金額の計算を行うことになります(新経理通達14の2)。
本事例においては、法人の会計上、1万円を仮払消費税等の額として福利厚生費と区分して経理していますが、税務上は仮払消費税等の額はないことになりますので、この1万円は福利厚生費の額に算入することになります。
ところで、本事例においては、福利厚生費の支出時に仮払消費税等の額として経理した金額を、決算時に雑損失として計上しています。この雑損失の額は、本来は福利厚生費の額に含めるべきものですが、いずれも当該事業年度の損金の額に算入されることについては変わりありませんので、結果的に税務調整は不要となります。

つまり、インボイス導入制度前では、仮払消費税等として計上できていた10,000円は、福利厚生費(上記の例では、雑損失)に含まれることになり、費用が増えます。

2.経過措置の間の仕訳(令和5年10月から令和11年9月まで)

経過措置がありますので、免税事業者への経費等の支払いに関して、支払対価の額のうちインボイス制度導入前の仮払消費税等の額に以下のパーセントを乗じた分が仮払消費税等として認めらます。

令和5年10月から令和8年9月まで 80%
令和8年10月から令和11年9月まで 50%

つまり、1.の説例で、考えるとインボイス導入制度前に比べて、令和8年9月までは、2,000円、令和11年9月までは5,000円、費用が増えることになります。

3.マネーフォワード会計の仕訳対応

まずは、STREAMEDさんのページにある各会計ソフトごとの対応の分類を見てみたいと思います。大きくわけて、2パターンあり、マネーフォワード会計は(1)のパターンです。

各ベンダーのインボイス対応を2つに分類すると以下となります。
(1)仕訳ごと(貸借ごと)に適格/非適格の情報を持つ形式
(2)非適格の税区分を追加し、税区分で判断する形式

 

(1)仕訳ごと(貸借ごと)に適格/非適格の情報を持つ形式

<仕訳イメージ>

仕訳ごと(貸借ごと)に適格/非適格の情報を持つ形式の仕訳イメージ

出力形式:STREAMED標準/マネーフォワード クラウド会計/弥生会計/EPSON財務応援R4/会計王/フリーウェイ経理/会計大将

(2)非適格の税区分を追加し、税区分で判断する形式

<仕訳イメージ>

非適格の税区分を追加し、税区分で判断する形式の仕訳イメージ

出力形式:freee/A-SaaS/TKC/発展会計/PCA/JDL/勘定奉行

実際にマネーフォワード会計の画面では以下のように変わっています。

デフォルトは「適格」にチェックがついており、免税事業者との取引の場合は、「適格」のチェックを外すという仕様です。

仮払消費税等が計上できない部分は、どの科目になっているかというと、上記の例でいえば、交際費に含めて計上されています。そのため、5,100円(本体価格5,000円+消費税等500円×(1-80%))となっているわけですね。

4.交際費の場合の注意点

交際費に関しては、少し注意しないといけないところがあります。

税務上の交際費から除かれる一人当たり5,000円以下の接待飲食費の判定についてです。

税抜経理を採用している事業者は10月1日以降、免税事業者の飲食店で飲食等を行った場合は、仕入税額控除の対象外となる金額を本体価格に足して判定しないといけない。

上記の例でいえば、5,100円を人数で割って、一人当たりの金額を算定して判定するというわけです。

各経過措置期間とその後の期間での、免税事業者の飲食店で店内飲食(適用税率10%)と持ち帰り(適用税率8%)の場合の5,000円の判定のボーダーは以下の通りになります。

 

税込金額での、交際費5,000円基準の判定は記帳時にパッと見て難しいため、一旦、会計ソフトに入れてみて計上金額が人数で割ったときに、5,000円以下かどうか判定して補助科目を選択するのが実務的な処理ではないでしょうか。

 

日本政策金融公庫「コロナ融資」の「同額借換」は9月末までか!?

日本政策金融公庫のコロナ融資の返済開始時期のピークは2021年6月、2022年6月とすでに到来しています。

しかし、まだ返済開始になっていない事業者もいます。

また、何とか返済はしているけれどもその返済が負担になっている事業者は少なくありません。そんな「コロナ融資の返済が厳しい」事業者に対して、「返済据置期間」を延長するために公庫は「同額借換」に前向きに取り組んでくれることが少なくありません。

ところが、この同額借換、もしかすると9月末までになるかもしれません。

1.「同額借換」とは?

同額借換とは、以前、コロナ融資を借りた金融機関から、同額の融資を再度行ってもらい、その資金で以前の融資の返済を行い、新たに借りた融資によって、返済猶予期間を延ばす方法です。

例えば、コロナ禍の2020年12月に5,000万円借り、据置期間3年とすると、返済開始は2023年12月になります。

その返済が厳しいため、もう一度、2023年12月に5,000万円を借り、2023年に借りた5,000万円をその資金で返済するという方法です。

2.コロナ資金繰り支援継続プログラムは9月末で終了か

現在、日本政策金融公庫では、コロナ資金繰り支援継続プログラムとして、「スーパー低利融資(新型コロナウイルス感染症特別貸付)」と「新型コロナ対策資本性劣後ローン」の2つの制度で対応しています。

これらの制度を使って同額借換を行うことになるのですが、今のところこれら「コロナ資金繰り支援継続プログラム」は9月末で終了する予定となっています。

3.「コロナ資金繰り支援継続プログラム」が終了する前にしておくべきこと

コロナ資金繰り支援継続プログラムが終了すると、同額借換による据置期間(返済猶予期間)の延長が難しくなります。そうなると無理してでも返済をするかリスケを依頼せざるをえなくなります。

公庫に「同額借換」を依頼しても、すぐ対応してもらえるわけではありません。

依頼して正式申込になるのは、1~2週間はかかります。申請が集中すると1ヶ月程度かかる場合もあり得ます。同額借換を希望するのであれば、少なくとも9月初旬までには、公庫に依頼を行っておかないと時間切れになる必要があります。

早めに公庫に話しをしておく必要があるのですが・・・

4. 「コロナ資金繰り支援継続プログラム」が延長となる可能性もあります。

今のところ、 「コロナ資金繰り支援継続プログラム」は9月末で終了となる予定ですが、12月末もしくは2024年3月末まで延長となる可能性もあります。ただ、以前の例では延長される場合も、終了予定月の中旬頃になっていたため、今回の分が延長されるかされないか判明するのが9月中旬以降となる可能性大です。

いずれにしろ、9月中旬の時点で「延長されない」ということが判明した後では、同額借換を依頼しても間に合わない可能性が高いですので、念のために早めに公庫に連絡されることをお勧めします。

いざというときの銀行融資以外の資金調達手法

金融機関に融資を断られたときでも、いろいろな資金調達の手法はあります。

最近は、フィンテック業界でネットのデータを使って銀行以外の企業が融資を行う事業に相次いで参入しています。

そういった融資は、AIによって判断するため、意思決定のスピードが速く、資金が急に必要になったときでも、素早く対応してもらえます。

今回は、データレンディング(オンラインレンディング)という資金調達手法についてお伝えいたします。

データレンディングとは、「ビッグデータ」と「AI(人工知能)」を活用し、人手をほとんど使わず、ビックデータを分析し、融資判断を行う融資サービスのことです。いくつかのサービス形態に分かれていますので、以下それぞれご紹介します。

1)スコアレンディング

AIがその企業の将来的なリスクや、返済の可能性を判断して、点数化を行い、融資額や融資条件を自動的に決定するというサービスです。

以前から「スコアリングモデル」による融資商品は、銀行を中心にあったのですが、これは、その精度を高めたものです。ノンバンク系による融資が先行しています。

<代表例>  J.Score AIスコア・レンディング

J.Scoreは、みずほ銀行とソフトバンクが出資して創った消費者金融です。しかし、2022年12月13日に、J.Score(ジェイスコア)とLINE Creditの事業統合が発表されました。J.Score(ジェイスコア)は、2023年1月31日で新規申込が停止されているそうです。

2)トランザクションレンディング

ネットの取引履歴(売上実績)を根拠とした融資サービスです。

ECサイトにおける売上のデータや、決済サービスにおける決済のデータをAIが分析することで、融資審査します。

ECサイトを利用している事業主が、「銀行から仕入れ資金が借りられないけど、どうしても必要だ」というときに使えるので、ユーザー側からすれば、とても使い勝手がよいものです。

<代表例>

  • 住信SBI銀行 dayta
  • 楽天スーパービジネスローンエクスプレス
  • GMO-PGトランザクションレンディング

3)バランスシートレンディング

ネットバンクやクラウド会計ソフトから確認できる入出金の状況データから融資の審査を行うオンライン融資サービスです。クラウド会計ソフト経由で送達した会計帳簿データをAIが分析して信用力を見極めるというものです。

過去の決算書で審査する従来の与信と比べて、期中のリアルタイムの情報から精度が高い融資を実行することができる特徴があります。

<代表例>

  • MFクラウドファンディング:マネーフォワード会計との連携
  • アルトアオンライン融資サービス:弥生会計との提携

(4)まとめ

金融機関からの融資以外にも、上記のAI技術を利用したデータレンディングによる融資サービスがあります。

データレンディングの普及で、中小企業や個人事業者が緊急時に資金が必要な時に、短期間で少額の資金調達方法の選択肢としても可能性が広がってきています。

このデータレンディングを利用するうえで、やっておくべきことは、「取引履歴や入出金データのリアルタイムな管理」です。その結果、企業の信用力が評価されやすくなり、有利な条件で融資を引き出すことが可能になります。

小規模事業者持続化補助金の採択率と留意点

小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が販路開拓の取組をする際に、その経費の一部を国が負担してくれ、それによって地域の雇用や産業を支える小規模事業者の生産性向上と
持続的発展を図ることを目的した補助金です。

今回は、この小規模事業者持続化補助金の採択率と補助金申請にあたっての留意点を解説していきます。

制度の内容と創業枠

この補助金の補助額は通常枠で50万円です。
特別枠の申請要件を満たせば上限200万円、さらに令和5年度はインボイス特例の上限上乗せがあるので、最大250万円となっています。

特別枠には、賃上げ枠、卒業枠等がありますが、創業者向けに「創業枠」が設けられており、最大200万円の補助上限と優遇されているため、申請をぜひ検討してみてください!

例えば、「ホームページを作ろうと思っている」「販促用のチラシを作ろう!」「新商品の試作品や包装パッケージの試作開発をしたい」などの計画がある創業者の方が対象になる可能性があります。

貰ったお金はもちろん返済不要ですが、所得税・法人税等の課税対象にはなりますので、ご留意ください。

採択率

直近の第11回の採択率は約59%でした。そのほか、過去の採択率の推移は以下の通りです。
(中小企業庁の公式サイトのデータを集計して筆者が計算)

申請者の数などにも左右されるため、その回によってバラつきがあるものの、約40%~70%で推移しています。

そうなんです。採択率は、非常に「微妙」なんです。

つまり、しっかりと準備して申請をすれば採択される可能性はあるが、準備が甘いと足元をすくわれて採択されなかったということもある制度なのです。

申請するまでの留意点

小規模事業者持続化補助金の申請にあたってすることは以下の5つです。

① 電子申請(Jグランツ)を利用するために、GビズIDの取得

郵送でも可能ですが、電子申請の圧倒的に楽ですので、電子申請の準備をしてください。

GビズIDの取得は2週間程度かかる場合もあるため、早めに申請することをお勧めします。無料でできます。

② 公募要領等の確認

必ず、公募要領等を読み込んでください。

あとから、要件を満たしていないことに気づいて、それまでの準備が水の泡なんてこともあります。

また、補助金申請は期限を過ぎた場合、どんな良い計画や事業であっても絶対に認められません。したがって、タイムスケジュールを確認して、計画的に準備していくためにも公募要領には目を通すのはマストです。

③ 補助対象経費と資金繰りの検討

そもそも、補助金の対象となる経費が発生することが、補助金の前提です。なので、ご自身の事業として、販促活動等に係る経費がどのように、どのくらい発生するのかを計画してみてください。経費として発生する必要がないものに対して、補助金を申請することはできません。

また、補助対象経費を支出するには資金が必要です。

「だから補助金を申請するんじゃないか!」と思われるかもしれませんが、補助金は支出した後に実績報告をし、認められたものが、補助金として後から入金されます。

つまり、キャッシュアウトが先行するため、その資金を用意する必要があります。

自己資金や融資で用意した資金をどのように使っていくのか、資金計画を立てる必要があります。

④ 申請書類や計画の作成

小規模事業者持続化補助金の申請書類には「経営計画書兼補助事業計画書①(様式2)」というものがあり、この書類作成が最も時間がかかるものになっています。

内容は、主にはご自身の事業内容や経営環境・強み/弱み等の定性的な内容から、事業計画等の定量的なものまで、記載することになります。

また、補助金の対象となる補助事業の内容やその効果等も記載してアピールする必要があります。

記載できる枚数が指定されており、端的に要領よくまとめていくのが難しいところです。

さらに、様式2以外にも必要な書類や資料が多岐にわたり、漏れなく準備する必要があります。

⑤ 商工会議所等での事前確認をしてもらう

小規模事業者持続化補助金は、商工会議所等の支援を受けながら取り組む事業という要件があるため、様式2・3を作成したら、それを商工会議所等に持参し、確認してもらう必要があります。

確認が終わると様式4「事業支援計画書」を入手することになり、その資料が申請資料の一部となっています。

留意していただきたいのが、この商工会議所等への事前確認の期限が、補助金申請期限より前になっていることです。補助金申請期限に間に合えばよいというものではなく、この商工会議所等にいつまで行かないといけないのかを十分に確認しておくことに気をつけてください。

上記を行った後に、期限内までに電子申請を行って、後は認可されるのを願って待つだけです!

ぜひ、小規模事業者持続化補助金の制度を利用して、創業に役立ててみてください!

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